国際社会の制裁に加え、相次ぐ自然災害に苦しめられている北朝鮮。国連世界食糧計画(WFP)の報告書によると、今年の小麦、ジャガイモ、トウモロコシ、コメなどの作物の収穫量は平均以下だった。不足する食糧の量は136万トンに上ると見られている。
そして、今年もまたその「犯人探し」が始まった。
デイリーNK内部情報筋は、咸鏡北道(ハムギョンブクト)延社(ヨンサ)郡の三浦(サムポ)共同農場では今年の農作業の経験について発表する会が開かれたと伝えた。「方式上学」と呼ばれる行事で、「各農場の責任者が、収穫量の多かった単位(作業班)を紹介し、彼らの得た経験を知らせる討論会と発表会」(情報筋)で、優秀と評価された農場員には平壌旅行の特典が与えられる。
テーマが「同じ土地、同じ種、同じ肥料を使って農業をしているのに、なぜ土地によって収穫が多い、少ないに分かれるのか」になったところで、三浦協同農場の優秀農場員に選ばれたある農民が次のように指摘した。
「種、肥料、農薬など政府からもらえた分だけでも正直に使えば、農業がうまくいかないはずがない」
つまり、農民が供給された種、肥料、農薬を横流ししているとのストレートな批判だ。そんな批判を聞きながら内心怯えていた農民も少なかったのではないだろうか。
私腹を肥やしている者もいるだろうが、のっぴきならない事情を抱えた人も少なくないだろう。北朝鮮の農民は、毎年春に高利貸しからトウモロコシなどの食糧をカネの代わりに借りる。秋の収穫後に利子を付けて返すという条件だが、返済に行き詰まる人も多いと言われている。そんな借金を返すために、供給された肥料や種などを売っている農民もいると思われる。