韓国における新型コロナウイルスの最大のクラスタとなっているキリスト教系新興宗教「新天地」をめぐり、新たな疑惑が浮上している。

大邱MBCは、大邱市総合福祉会館内にある、35歳以下の女性が低廉な家賃で入居できる市営住宅「ハンマウム・アパート」に住む142人のうち、46人がウイルスに感染したが、その全員が新天地の信者で、住宅全体では94人が信者だったことが明らかになったと報じた。

また、入居審査の時に宗教を問われたとの証言もあり、「公営の新天地アジト」ではなかったのかという疑惑が浮上している。

感染者を処刑

かねてから強引な勧誘、隠蔽体質などで様々な問題が指摘されてきた新天地だが、新型コロナウイルスの問題ではスケープゴートにされている感は否めないとは言え、身から出た錆であることも事実だ。新天地同様に隠蔽体質の北朝鮮は、これを反宗教プロパガンダに利用している。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、穏城(オンソン)や会寧(フェリョン)防疫事業所のイルクン(幹部)と宣伝員たちが住民を対象としたウイルス感染予防教育を行っているが、その中で「南朝鮮(韓国)が大量死の修羅場と化したのは、宗教集団が大きな元凶」だと説明していると伝えた。

北朝鮮は国営メディアなどを使い、新型コロナウイルスの予防についての教育を行っているが、その実例として新天地を挙げ、「宗教そのものが悪」であるかのごとく宣伝しているというのだ。

「新天地ような南朝鮮の宗教集団を、規律なく自由主義で放置した結果、死がうごめく修羅場になった」(衛生事業所の担当者)

韓国の宗教の中には、性的マイノリティや外国人労働者、難民を含めた移住民に対する差別を煽るものもあり、また、金銭問題や世襲、性暴力などの問題を起こす宗教指導者がいるのは事実だが、宗教すべてに問題があるというわけでは決してない。

しかし、北朝鮮は宗教、中でもキリスト教を体制を揺るがす脅威とみなして厳しい弾圧を加えてきた。

宣伝事業の場には防疫担当者のみならず、党幹部まで現れて「韓国は伝染病拡散の温床となり、堕落した資本主義よりわが国の社会主義制度の方が100倍、1000倍優れている」とプロパガンダを行っているという。

「腐りきった南朝鮮社会には迷信、廃倫、背徳を繰り返すところから数千人の伝染病の感染者が発生し、迷信を信じて宗教を追従する者は虚しくも伝染病にかかり死に至る」(党幹部)

また、韓国政府の無策で感染者が爆発的に増え、全世界が交流を絶っているとして「強力な初期対策、早期の国家非常防疫体制稼働、検疫、検査事業を行った人民大衆中心の社会主義の偉大性」などについて語っているとのことだ。

しかし、新型コロナウイルスをめぐる北朝鮮の現実が異なることは言うまでもない。

各地から新型コロナウイルスに感染したと疑われる患者の発生が相次いでいるが、北朝鮮当局は「わが国に感染者はいない」と繰り返すばかりだ。また、検査や治療、予防を行おうにも医薬品が不足しており、消毒用品を求める人々の声に、防疫担当者が「感染予防のために塩を摂取せよ、消毒も塩水でせよ」と言ってしまう有様だ。

また、感染が疑われる人を平壌郊外から、人の目に触れにくい地方の施設に移送したり、規則を破って中国人と接触し、感染したと思われる人を処刑するなど、まともな対策とは言い難いことを繰り返している。