金正恩総書記の「秘密資金」を運ぶ現金輸送車を、中国当局が押収したとの情報が出ている。

韓国紙・東亜日報記者で脱北者であるチュ・ソンハ氏は自身のブログで、大量の現金を積んだ北朝鮮の輸送車両が昨年9月、中国領内で押収されたと伝えている。

その現金の素性は、どのようなものか。

周知のとおり、北朝鮮は核・ミサイル開発に対する国際社会からの経済制裁を受けており、事実上の金融封鎖状態にある。多くの品目で貿易が禁じられ、国連加盟国は北朝鮮労働者の受け入れも出来ない。

それでも中朝間では、米国などの監視の目をかいくぐって密輸や労働者派遣が行われ、細々とながらも北朝鮮に外貨を供給している。そこで問題となるのが、稼いだ外貨の送金手段だ。国際送金を行えば、米国に捕捉されるのは時間の問題だ。

となれば、現金を持ち運ぶしかない。チュ・ソンハ氏によれば、北朝鮮当局は中国遼寧省の丹東にある領事館に現金を集め、一定量に達するとクルマに積んで本国に持ち込んでいるのだという。アナログなやり方だが、これがいちばん確実だ。

だがそれも、中国の庇護があればこそだ。現在、中朝関係は良好であり、中国から北朝鮮へのエネルギー・食糧支援も続いていると見られる。

それでも、中国の北朝鮮に対する姿勢は「是々非々」が基本と言える。

北朝鮮の態度に我慢のならないところがあれば、中国も相応の対処をする。9月に中朝の間で何があったかは不明だとしているが、それもおいおい判明するかもしれない。

仮に、北朝鮮側担当者の何らかの「落ち度」が原因だったとしたら、最大級の厳罰を下された可能性がある。

ところで、チュ・ソンハ氏は押収された現金を金正恩氏の「秘密資金」と呼んでいるが、その根拠についてこう語っている。

「北朝鮮には、ところで北朝鮮は、どうして外貨を現金で持ち込むのか。そのカネで物資を購入して持ち帰れば良いのに、なぜ米ドルと人民元を持っていくのか。

(中略)

物資を買って帰っても良いのだが、それは金正恩が必要としているものではない。金正恩には現金だけが必要なのだ。困窮するほどドルを貯め込んで置き、後で使わねばならないからだ。今、海外からは金正恩とその一族の豪華生活を支える食料品やぜいたく品が流れ込み続けているが、それも現金があればこそ可能なことだ。対北制裁がいつまで続くかわからないだけに、金正恩は少しでも多く貯めておこうと必死なのである」

ちなみに、押収された現金は昨年11月の時点で、まだ北朝鮮に返還されていなかったという。