中国のメディアは、「党の喉と舌」と言われる。中国共産党の一党独裁体制を維持するのに必要な情報を伝える代弁者であるとの意味合いだが、現在の中国のテレビは、バラエティ、ドラマなどが多い娯楽色の強いものが目立つ。報道には厳しい規制があるものの、体制批判につながらない範囲内で事件、事故、軽いニュースを伝える番組が多い。
テレビ、映画、スポーツなどの娯楽で国民の不満を逸らそうとした、韓国の軍事政権時代のメディア政策に近いとも言えよう。
一方、北朝鮮のメディアはどうかと言うと、イデオロギー色の強いものが大部分を占め、娯楽的な要素は少なく、事件や事故の報道は、有線ラジオの第三放送や、政治講演会において思想統制などに利用する価値のあるごく一部が伝えられるに過ぎない。
国民の多くが「禁制」である韓流にハマってしまう背景に、情報や娯楽への欲求を満たすだけのものを提供できない、情報政策の稚拙さがあると言えよう。そうした欲求は、厳しい法律、取り締まりだけで抑えきれるものではないのだ。
その欲求を満たすものが、口コミだ。人が数人集まりさえすれば、噂話に花が咲く。噂話は、行商人を通じて全国各地に広まる。もちろん、当局にとって都合の悪い話も少なくなく、その威力を恐れる当局は、何か重大事件が起きるたびに噂を遮断するために、人が集まることを制限しようとする。
(参考記事:違反したら「残酷に処刑」も…北朝鮮で飲み会禁止令)
1年以上続くコロナ鎖国により、1990年代後半の食糧危機「苦難の行軍」の再来が噂されている今、当局は噂を抑えようと宣伝活動を積極的に行っている。