年明けからすでに6回にわたってミサイルを発射し、軍事力増強を誇示している北朝鮮の金正恩総書記。その一方、国内ではキナ臭い空気が漂い始めている。

北朝鮮は、中国との国境に接した地域を中心に、非社会主義・反社会主義現象(当局の考える社会主義にそぐわない風紀紊乱行為)の取り締まりを続けている。それに対する国民の反感が、相当なレベルに達しているようだ。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、平壌の国家保衛省(秘密警察)から派遣されたメンバーと、咸鏡北道保衛局のメンバー10人が昨年10月中旬、中国との国境に接する会寧にやってきて、1月の今に至るまで検閲(取り締まり)を続けていると伝えた。中国キャリアの携帯電話の所持、使用など、国境に関連した全般的な問題を集中的に取り締まっている。逮捕された使用者が、処刑された例もすでに出ている。

(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面

これに対して、地域住民は苦痛の声を上げている。

情報筋は、検閲で逮捕された人が多く、中国キャリアの携帯電話を持っている人はほとんど姿を消し、北朝鮮在住の華僑ですら通話を行おうとしないと伝えた。

「要監視対象の家のそばには取締官が居座り、いつ電話するか見守っており、通話は容易でない」(情報筋)

彼らは、携帯できる電波探知機を持っており、電波をキャッチすると発信元と見られる家に踏み込む。目抜き通りの主要地点には哨所(チェックポイント)を設置し、通行人の荷物、身体検査を行い、次から次へと逮捕してきた。それがさらに露骨化しているというのが、情報筋の話だ。

「国は何もしてくれないくせに、なんとか生き抜こうとあがいている人たちを無条件で捕まえている。今後どうやって暮らしていけばいいのかという不平不満が続出している」(情報筋)

集中取り締まりに関しては、まもなく総和(総括)が行われるとのことだが、それで取り締まりが終了するかが見えず、他の取締官が乗り込んできて取り締まりが続くのではないかと情報筋は見ている。

地域住民の不満の高まりを察知した国家保衛省は、住民の動向を綿密に把握するようになった。2年も続くコロナ鎖国による経済難に加え、厳しい取り締まりが続き、不満の声はかなり前から上がっていたが、この状況が続けば、住民が不満を爆発させるのではないかと懸念し、住民の動きを注視するようになったというのだ。

実際、取締官との小競り合いは各地で起きており、大規模な暴動に発展しかねない火種がくすぶっているのが実情だ。

昨年末に行われた朝鮮労働党中央委員会第8期第4回総会では、新型コロナウイルスの非常防疫事業を「先進的かつ人民的」なものに転換するとの表明があった。国民の動きを押さえつけることがメインになっていたコロナ対策による不満の高まりが、当局にとっても負担になっていたものと思われる。

一方で国家保衛省は、取り締まりを名目に住民からワイロを受け取ろうとする取締官や幹部の摘発に力を入れている。

統制緩和で国民の不満を抑えるというものと同じ延長線上にあると思われるが、ワイロに頼って生活している保衛員からは、このままでは餓死しかねないとの声が上がっているとのことだ。