最近の日本ではあまり聞かなくなった「当たり屋」。保険金などを目当てに、故意に車にぶつかる行為を指すが、ドライブレコーダーや監視カメラが普及したことで、なりたたなくなったのだろう。

ドライブレコーダーはおろか、車の普及すら進んでいない北朝鮮でも、当たり屋は存在する。その実態を、咸鏡南道(ハムギョンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

事件が起きたのは先月中旬のこと。咸興(ハムン)市の沙浦(サポ)区域で、チェという女性が貨物トラックに飛び込んだ。幸い、命に別状はなかったが、トラックにぶつかった衝撃で倒れて、脳震盪を起こし、足に傷を負った。

彼女は、トラックのドライバーに対して、補償金の名目で2万元(約38万8000円)を要求。ドライバーは、自分には何の責任もないと要求をはねつけた。

咸興市安全部(警察署)が詳しい調査を行ったか否かは定かでないが、どういうわけか女性の肩を持ち、「事実関係がどうであろうと、人が車に轢かれて怪我をしている、治療費を払うか、監獄に行くかを選べ」とドライバーにプレッシャーをかけているという。

情報筋は詳細を語っていないが、拝金主義の蔓延る北朝鮮の現実や、補償金の額の多さを考えると、安全部は女性からワイロを受け取り、グルになってドライバーを罠にはめようとしている可能性も考えられる。

情報筋は、このような当たり屋になる人が少なくないとし、そのほとんどが厳しい食糧難の中で一家の生計を担っている女性で、家族を飢えさせないために、手段を選ばず、自分の命をかけた賭けをしていると説明した。