ペイパルをオークション最大手イーベイに15億ドルで売却したティールは、スタートアップ企業のエンジェル投資家となり、フェイスブックへの初期投資50万ドルを10億ドルにしたことで名を馳せた。だが彼は、シリコンバレーのイノベーションに不満だった。「空飛ぶ車が欲しかったのに、手にしたのは140文字だ」という言葉はよく知られているが、ティールからすればTwitterは知性を無駄なことに使っているのだ。
そんな彼は、自らの体験から、天才にとって大学で学ぶ4年間(博士号まで取得しようとすれば10年近く)は無駄でしかないと考えた。そこでイノベーションを加速するために、高等教育を素通りしていきなり起業するための「奨学金」をつくったのだ。
20 under 20に応募してきた若き天才たち『20 under 20』でウルフは、ピーター・ティールの野心的な「奨学金」制度に応募する天才(ギフテッド)たちを取材することで、シリコンバレーの内側に迫ろうと試みている。
2010年12月にフェローシップの募集を始めた当初から、ティール・ファウンデーションはソーシャル・ネットワークには興味がないと明言していた。「われわれは次のフェイスブックを探しているわけではない。普通の人間が現在可能だと考えていることの2年から10年くらい先を考えている人を探している」というのが選考基準で、4000人の応募者からオリジナリティと説得力を中心に40人の最終候補者が選ばれ、サンフランシスコのハイアット・リージェンシーの会議室で50人ほどの審査員(大学教授、起業家、投資家など)の前でプレゼンテーションすることになった。