パロアルトでは、ヒールの高い靴やドレスやスカートを身に着けている女性はまず見かけない。ランジェリーショップを見つけるのもひと苦労で、日が沈んだあとに羽織るのはスカーフやショールではなくフリースジャケットだ。
シリコンバレーをドレスで歩くことは、高校生が昼からダンスパーティの準備をしているようなものだ。そうでなければ、東海岸からの観光客か、コスプレパーティ客のレッテルを貼られる。ジーンズが男女共通のユニフォームで、男性はスティーブ・ジョブズが好きだったスニーカーを履いている。
女性のジーンズはワイドでもタイトでもいいが、スカートではなくパンツであることは絶対条件だ。コーチやグッチやポロなどのブランドを見せびらかすのはご法度で、ロゴやスローガンは必ずスタートアップのものを使わなくてはならない。2007年につくられたフェイスブックのTシャツを着ていることは、フェラーリに乗っている以上のステイタスになる。――フェラーリは20万ドルほどだが、フェイスブック創業時の2007年の社員なら株式上場後に数千万ドルを手にしているかもしれないのだ。
シリコンバレーの文化では、男女関係も東海岸とは大きく異なる。
パトリ・フリードマンは経済学者ミルトン・フリードマンの孫で、サイバー・リバタリアンとしてシリコンバレーの思想的リーダーの一人と目されている。サンフランシスコの沖、アメリカの領海外に自由都市を建設するシーステッディング・プロジェクトを唱え、ティール・フェローにも企画段階から参加していた。