「我々に必要なのは、私有財産を保護する者だけだ。それ以外はすべて自分でなんとかなる」「政府は、我々をほうっておくべきなんだ」と主張する彼にとって、荒らしとは体制を揺さぶる武器なのだ。「私は悩みの種でありたい。機械の内部に入り込んだ砂粒のように」
ホルボーンじいさんの理想とする国家のないリバタリアンのユートピアに暮らすためには、人間は強く、自立していて、自分の行動に責任を持てなければならない。誰もが口をつぐんだ従順な社会は自主規制を招くだけだ。その罠を突破するには、不快さの限界を追求し、社会に警鐘を鳴らしつづけなければならない――。
このように考えるホルボールじいさんが「ヒルズボロの悲劇」の遺族を標的にしたのは、彼らが「被害者意識症候群」にかかっていることを証明するためだとういう。
「私が物議をかもすようなことをしたのは、彼等が被害者であることを楽しんでいることを示すためにすぎないのさ。その反応は驚異的だったね。彼等は、私の事務所に火をつけてやるとか、私の子どもたちを強姦してやるとかいって、脅してきたんだ。わはははは! 私は正しかった。彼等の行動がそれを証明している」
この事件でホルボーンじいさんはメディアによって身分をあばかれ、バートレットと会った直後、南ブルガリアに移住したという。
「私は正義の味方だ」ホルボーンじいさんはカフェのなかでそう叫んだ。「私は、偽善を暴いているんだ。社会をより自由にしようとしてるんだ!」