同社は2003年、巨額の不良債権を処理するため、取引先などに対して普通株に転換できる優先株を発行し、「1兆円増資」を行なった。その後、優先株の転換による希薄化を避けるため、昨秋までは自社株買いを進めていた。
今後、仮に普通株を6000億円増資すれば、現在の株価水準で計算すると、発行済み株式数は約2割増え、1株当たり利益が希薄化する。株価上昇につながる成長戦略を示せなければ、既存株主から批判が高まる恐れもある。
にもかかわらず、増資に踏み切った背景には、自己資本の健全性をめぐる規制強化の動きがある。米金融機関へのストレステスト(健全性審査)において、米当局は金融機関に対し、「コアTier1」を重視する姿勢を示した。
コアTier1の定義は統一されていないが、一つの考え方は中核的自己資本(Tier1)から優先株・優先出資証券・繰延税金資産純額(繰税)を除き、資本性の高い普通株などを中心としたものとされる。
三井住友フィナンシャルグループは2.71%、三菱UFJフィナンシャル・グループは4.53%であるのに対し、みずほFGは開示していない。その訳は数字の低さにある。
みずほFGは普通株への強制転換型優先株や繰税なども含めた独自指標の「本源的資本」比率を公表。前期末時点で3.12%であり、6000億円の増資を行なえば、さらに1%増えるという。