倒産リスクが最も高い企業は――。『週刊ダイヤモンド』6月22日号の第1特集は「最新版 倒産危険度ランキング」。

今秋以降、減少傾向にあった企業の倒産件数が増加に転じるとみられています。特集では上場企業3665社の倒産危険度を総点検。危険水域にある423社をリストアップするとともに、最新の倒産事情に迫りました。

中小企業の“延命ルール”が消滅
今秋から始まる大倒産時代

リーマンショックから10年以上もたつ。本格的に回復できない企業はそろそろ幕引きかもしれない」――。

 今年5月、地方銀行のあるトップの言葉が、融資先を震え上がらせた。

発言の主は、横浜銀行と東日本銀行を傘下に持つコンコルディア・フィナンシャルグループの川村健一社長だ。横浜銀行のお膝元である神奈川県の運送会社の社長は、「ずいぶん踏み込んだ内容だったので、びっくりした」と青ざめた表情で語る。

 大倒産時代の足音が近づいている。帝国データバンクの内藤修・横浜支店情報部長は、「今年は企業倒産が増加に転じる年になる。秋以降がターニングポイント」と分析する。

 足元の倒産件数は減少基調にある。

しかし、休廃業・解散件数を加えた「国内で消滅する企業の件数」は、実は急増中だ。内閣府は景気動向指数の基調判断を6年ぶりに「悪化」と結論づけた。今後、倒産件数が増加に転じれば、国内から企業が消えるペースはさらに加速する。

 景気の他にも、企業を取り巻く環境は悪化の一途だ。とりわけ、中小企業にとって最大のリスクは冒頭で触れた金融機関の融資の厳格化。2009年から経営不振の中小企業を延命させるため銀行を縛ってきた“ルール”が今年3月末で消滅したのである。

 前出の運送会社の社長は、「横浜銀行は不良債権処理をする体力がある。白黒をはっきり付ける時期に来ているのだろう」と警戒する。

 企業の延命ルール消滅以外にも、倒産リスクを高める三つの内憂外患が企業に迫る。

 二つ目のリスクは人手不足だ。サービス業や建設業を中心に従業員が集まらず、現場がボロボロになって事業が続行できなくなり、倒産に至るケースが増えている。

 三つ目のリスクは自営業者の高齢化。

後継者不在が原因の廃業・倒産が続出している。

 四つ目のリスクは米中貿易戦争である。中国での受注急減や世界経済の減速懸念が急速に高まっている。経済産業省の幹部は、「仮に米大統領がトランプ氏から代わっても、米中対立の構図はそのまま」との見方を示す。米国民は貿易赤字の削減を支持しており、中国に圧力をかける以外に代替策がないことがその理由だ。

 米中貿易戦争が恒常化するとすれば、中国を生産拠点として米国に輸出して稼ぐ従来の日本型モデルは抜本的に見直しを迫られる。

資金的、能力的に対応できない企業は今後バタバタと倒れるだろう。

過去2回のランキングで
ワースト20企業の生存確率は20~35%

 こういった時期だからこそ、『週刊ダイヤモンド』では6年ぶりに倒産危険度ランキング特集を復活することにした。前回(13年1月26日号)と、前々回(08年10月4日号)で取り上げた倒産危険度ワースト20が、その後どうなったかを検証したのが次の表だ。

 倒産した企業は12年、08年とも5社だった。これとは別に上場廃止となったのは12年が5社、08年が7社。社名を変えることもなく、株式市場にそのまま生存できている確率は、12年が35%、08年が20%という結果になった。

 倒産危険度ランキングは過去の財務データを基に計算したもので定性的な情報は考慮していない。あくまで企業の経営体力や健全性を評価する一つの指標にすぎない。

 ただ、今回本誌が特集でまとめた最新版の倒産危険度ランキングのワースト10に限れば、財務諸表に注記される「継続企業の前提(ゴーイングコンサーン)に関する疑義」が付いたのは6社に上る。これは監査法人がお墨付きを与えた「危険信号」だ。

 さらに、企業の存続に疑念を抱かせる状況を示す「継続企業の前提に関する重要事象」も含めれば、ワースト10のカバー率は8割になる。倒産危険度の精度はそれなりに高いといえるだろう。