サントリーホールディングス(HD)の佐治信忠会長兼社長の後継社長に新浪剛史・ローソン会長が内定した。7月1日の取締役会で正式決定し、10月1日に就任する予定だ。

 佐治社長は新浪氏について、「そのエネルギーや関心領域の広さ、国際感覚など、社外で最もサントリーのDNA“やってみなはれ”精神を持ち合わせた人物」と絶賛。「たまたま4代創業家社長が続いたが、一番ふさわしい人がやるのが会社のためにも社員のためにも社会のためにもなる」と言う。

 2001年から社長を務める佐治社長だが、代表取締役副社長として実質的に経営を担ってからは24年がたつ。その中で度々指摘されてきたのが後継者問題だ。

 現在サントリーには創業者の鳥井信治郎元社長の孫に当たる佐治社長、同じく孫で生産面を統括する鳥井信吾副社長、それに鳥井信一郎前社長の息子で佐治社長にとっては従甥に当たる鳥井信宏・サントリー食品インターナショナル(SBF)社長、計3人の創業家出身役員が在籍する。鳥井SBF社長が最右翼とされてきたが、40代と若く「事業の成功体験がなく、まだ私の後継としてグループ総帥を任せられるまでに成長していない」(佐治社長)。

さらにSBFが13年に上場したばかりということもあり、HD社長に昇格するのは当分の間難しいという見方が強かった。

 その中でひそかに白羽の矢を立てられたのが新浪氏だ。数年前から内々に打診。「彼が後継者にローソンの経営を任せられるようになるまで何年も待っていた。会長に就任した今年5月に正式にオファーをした」(佐治社長)。

 といっても今後、サントリーが創業以来のオーナー経営から完全に脱却するわけではない。

佐治社長は会長として1兆6000億円で買収した米ビーム社を統合するという大仕事があり、当面会長として実質的なグループ総帥を担うと断言した。新浪氏には「10年くらいは社長をやってほしい」とも言及しており、その間に鳥井SBF社長が佐治社長の求める“成果”を挙げれば、晴れて総帥として禅譲を受けられる計算となる。

ローソンにも新たな試練

 一方、ローソンの今後にも注目が集まる。サラリーマン社長ながら新浪氏もオーナー色の強い経営者だった。02年の社長就任後、チェーン全店売上高を約1兆3000億円から約2兆円に拡大させた実績は、そのトップダウン経営によるものだ。

 メーカーと小売りは取引上の利害関係が直接絡む間柄。

当然ながらサントリーHDの社長となれば、完全にローソンとの関係を断たなければ、セブン-イレブンなどローソンのライバル企業と円滑に付き合えない。後継者である玉塚元一社長は、新浪氏の後ろ盾を一切失う中で手腕を試される。

 トップダウン型の経営者同士で共鳴するものがあったからこそ成立したであろう今回のトップ人事。創業116年目にして外部の血を経営に入れるという初めての決断がうまくいくかは、まさに“やってみな”ければ分からない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子、松本裕樹)