税金が上がることを歓迎するひとはいませんから、生きていくのに必要な食品への課税軽減を有権者が歓迎することは間違いありません。もともと自民党は軽減税率に否定的でしたが、支持(宗教)団体に軽減税率導入を約束した公明党が、安保法制に賛成した見返りとして強硬に導入を求め、参院選後の憲法改正を目指す安倍政権が「貸しをつくる」政治判断をした、という経緯も報道のとおりでしょう。
新聞への軽減税率適用が決まったのも、保守系の二紙が安保法制を熱烈に支持したことへの論功行賞なのは明らかです。こちらも憲法改正への布石で、アメを与えることでさらなる協力を確約させる、というのも理に適っています。
安倍政権をきびしく批判していたリベラルな新聞にも軽減税率の恩恵が及びますが、じつはこれも計略のうちで、案の定、ネットなどでの批判は「権力」に向かってキャンキャン吠えるふりをしておいて、じつは懸命に尻尾を振っていた新聞社に集中しています。そう考えれば、見事な深謀遠慮というほかありません。
食品への軽減税率は社会的弱者のためとされますが、富裕層も恩恵を受けるため、消費税の逆進性をほとんど改善しないことは税の専門家から繰り返し指摘されています。いずれ、「アワビや霜降り牛肉の課税をなぜ軽減するのか」という批判が出てくるのは確実で、実際、「消費税先進国」であるヨーロッパではぜいたく品への適用除外が増えすぎて混乱を来たしています。