無所属の候補に与野党が相乗りする昨今の知事選では、与党が知事を無条件で支持し、不祥事から守ることはなくなりました。それなのになぜ舛添氏が大統領のように振る舞えたかというと、次回の選挙でも勝つという強い見込みが共有されていたからです。さらに4年、知事の座にあると思えば、都議会議員も対立を避けようとするし、都庁の職員も黙って指示に従うでしょう。しかし有権者の信頼は蜃気楼のようなものなので、ちょっとしたきっかけで失われてしまいます。
東京都知事がファーストクラスを使い、一流ホテルのスイートルームに宿泊したとしても、批判はされても辞任するほどのことではないでしょう。週末の別荘通いにしても、謝罪してあらためればいいだけの話です。致命的だったのは、マンガ『クレヨンしんちゃん』を資料代、絹の中国服を書道のためと強弁し、家族旅行のホテル代約37万円まで政治資金で支払っていたことでしょう。金額の問題ではなく、そのセコさが知事にはとうていふさわしくないと見なされたのです。
その後の追及で、舛添氏が私的な経費をすべて政治団体に回しているのではないかとの強い疑いを持たれることになりました。一つひとつはささいなことでも、その原資は税金なのですから、これでは民心を維持できるわけがありません。「次の選挙は勝てない」とわかった瞬間に、すべての権力を失うことになったのです。