日本電気株式会社(以下、NEC)と国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下、産総研)は、AIシミュレーション融合技術を用いて、生産ラインの事前評価と運用の効率化を行う実証実験を、日産自動車株式会社と共同で実施し、生産ライン構築・計画変更を10倍以上高速、かつ予測誤差1/6以下の高精度化を実証したと発表した。

AIシミュレーション融合技術は、NEC-産総研人工知能連携研究室が開発、精緻なシミュレーションを短時間で自動構築し、少ないデータから最適な意思決定を支援する。
生産ラインへの適用では、機会損失の削減・在庫削減や、原価見積もりの精緻化・追加投資の削減が可能になるという。本技術は、顧客の応用研究・開発を支援する新事業会社BIRD INITIATIVE株式会社を通じて2020年11月からコンサルティングサービスとソフトウェアプロトタイプ開発サービスを提供する。

■実証実験の背景と狙い

NEC・産総研・日産自動車、生産ラインの事前評価と運用の効率...の画像はこちら >>

via プレスリリース近年、製造事業者では、新規生産ラインの稼働前や、既存生産ラインでの計画変更前に、生産ラインシミュレーションなどを用いて、事前評価・分析を行っている。従来は、生産ラインの各工程での平均所用時間、人員・ロボットなどの配置をパラメーターとして設定し、シミュレーションを繰り返すという作業を人間が行っていた。しかし、個別の顧客ニーズに合う商品を効率的に生産するマスカスタマイゼーションによる多品種混流生産ラインでは生産ラインが複雑化しパラメーターのパターンが膨大となり、評価時間の増大やシミュレーション精度に課題があった。
NEC・産総研・日産自動車、生産ラインの事前評価と運用の効率化を行うAI技術の実証実験を実施

via プレスリリース今回、日産自動車の実際の生産ラインで利用している生産シミュレーターを活用し、精度の高い結果を得られるパラメーターを推定する実証実験を行った。実証の結果、新規生産ラインの早期構築や既存生産ラインでの迅速な計画変更により機会損失の削減・在庫削減が可能になること、また、精緻な予測による原価見積もりの精緻化・追加投資の削減が可能になることが確認できたという。本技術を自動車メーカーに適用した場合、数百億円規模の効果があると推定されるとのことだ。

■本技術の特長

・精緻なシミュレーションを短時間で自動構築
これまでシミュレーターに投入するパラメーター設定などに人手で約1ヶ月かかっていたが、今回の実証実験では、約1日で達成できた。また、シミュレーションでの生産効率の予測誤差が、約20%から約3%に改善した。
・少ないデータから最適な意思決定支援
今回の実証実験では、最終工程のスループット約1ヶ月分のデータという少ないデータで生産ライン計画の作成や高精度な予測を実現した。

従来のAI技術の典型的な活用方法であった、ビックデータ分析による意思決定支援とは異なり、本AI技術はシミュレーションデータを自動で生成し、実データを補完することにより、少ないデータからでも最適な意思決定が可能になる。なお、本技術は、自動車メーカーに加え、重工業・化学・半導体・精密機器などの製造事業者一般、さらに、物流事業者などに広く適用できるという。