アウディは2013年に発表した自動運転レベル3の実験車から研究を重ね、2017年に世界初となる「自動運転レベル3」に相当するシステム「Audi AIトラフィックジャムパイロット」の開発に成功しました。

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2020年11月11日にホンダが世界初となる自動運転レベル3の型式指定を取得し、2020年度内に自動運転システムを搭載したレジェンドの発売を予定しているというニュースが報じられましたが、2017年に「Audi AIトラフィックジャムパイロット」という自動運転システムを開発し、レベル3に到達したのはドイツのアウディでした。当時、各国の法整備は自動運転に対応しておらず、レベル2に相当するADASを実装する形での販売を余儀なくされたという歴史があります。
そんなアウディの現在の開発状況や、同社の自動運転機能について解説します。

そもそも自動運転レベルとは?

現在、自動運転を語る上で欠かせない言葉として「自動運転レベル」があります。ドライバーと車が担う運転動作の比率や、テクノロジーの到達度、走行可能エリアの限定度合いなどから、自動運転を定義づけたものですが、レベル0からレベル5までの6段階に分類されています。自動運転の実現には、テクノロジーの進化だけではなく、法律の改正やインフラの整備など、多くの障壁を取り払いながら、社会制度そのものを変革していく必要があり、この定義を元にさまざまな議論が進められています。

自動車の自動化レベルを表す指標

自動運転レベルは、ドライバーと車が担う運転動作の比率や、テクノロジーの到達度、走行可能エリアの限定度合いなどから、自動車の自動化レベルを示しています。かつて日本では、米運輸省道路交通安全局(NHTSA)の定義を用いるケースが多く見られましたが、現在はSAE(Society of Automotive Engineers)の6段階の自動運転レベルが用いられています。

SAEが自動運転技術を標準化している

SAEはSociety of Automotive Engineersの略で、1905年に設立された学術団体が母体になった組織です。自動車に限らず、航空宇宙や産業車両など、幅広い輸送技術にかかわる研究者や技術者が会員になっており、あらゆる乗り物の標準化・規格の制定を行っていますが、自動運転レベルの定義も公表しています。米運輸省道路交通安全局(NHTSA)が2016年にSAEの基準を採用したことから、世界基準として定着しつつあります。

自動運転レベル3以上が自動運転と認められる

6段階の自動運転レベルにおいて、レベル0~2とレベル3以上では、その内容が大きく変化します。レベル0~2では運転の主体が人間で、自動運転の技術はあくまで運転の補助や支援にとどまります。しかし、レベル3になると運転の主体がシステム側に変わり、ここからレベル5までが実質的な「自動運転」になります。なお、レベル0が自動運転なし、レベル1が運転支援、レベル2が部分的自動運転、レベル3が条件付き自動運転、レベル4が高度な自動運転、そしてレベル5が完全自動運転と、それぞれのレベルを表現することができます。

自動運転レベルについて知っておこう

自動運転では、SAEによる6段階の自動運転レベルが基準になっています。各レベルには定義があり、それぞれどんな状態を示しているのか理解しておくと、自動運転への理解が深まります。
自動運転レベルのごとの特徴や違いを解説していきます。

自動運転レベル0

現在、路上を走っている車の多くはレベル0です。ドライバーがすべての動的な運転タスクを実行している状態を指します。従来の車にも速度超過やライトの点灯など、さまざまな予防安全システムが搭載されていますが、システムが警告を発するだけのものは、車の制御に影響を与えないため、自動運転レベルは0とみなされます。

自動運転レベル1

レベル1は、運転支援技術が搭載された車を指します。アクセルとブレーキ操作による前後の加速や減速をシステムが制御、もしくはハンドル操作による左右の制御のどちらかの監視・対応をシステムが担っており、残りの監視・対応はドライバーが行うような車です。たとえば、アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)という高速道路などで使用されるような、あらかじめ設定した速度で自動的に加減速を行うことで、前を走る車に追従する技術がありますが、これはレベル1に相当します。また、緊急自動ブレーキや、車線を逸脱したことを検知するとステアリング操作をアシストする車線維持支援(LKAS)もレベル1に該当します。

自動運転レベル2

レベル2は、部分的に運転が自動化された車両で、アクセルとブレーキ操作による前後の加速や減速の制御と、ハンドル操作による左右の制御の両方をシステムが担うことになります。ただ、運転の主体はドライバーで、システムはあくまで運転を支援する役割に止まります。そのため、ドライバーは常にハンドルを握って、運転状況を監視操作することが求められます。こうした事故を未然に防いだり運転の負荷を軽減したりするための先進運転支援システムは「ADAS(Advanced driver-assistance systems)」と呼ばれており、ADASの機能が向上して、障害物を100%検知し、100%正しい判断を下し、100%正確な制御を行うレベルに達すれば、完全なる自動運転技術が確立したことになると言われています。

自動運転レベル3

レベル3は条件付き運転自動化を意味し、運転の主体がドライバーからシステム側に変わる点で、レベル0~2と大きく異なります。厳密にいえば、このレベル3からが自動運転です。ただ、一定の条件下ですべての運転操作をシステムが行いますが、緊急時にはドライバーが運転操作を担うことになっています。

これまで自動車の交通ルールを記載した「道路運送車両法」や「道路交通法」では、自動運転を想定しておらず、自動運転レベル3の車両が公道を走行することができませんでした。
そこで日本政府が動き2019年3月に「道路運送車両法の一部を改正する法律案」及び「道路交通法の一部を改正する法律案」が閣議決定され、2020年4月になり両改正案が施行されたという経緯があります。これによって世界に先駆けて、2020年11月11日にホンダが世界初となる自動運転レベル3の型式指定を取得しました。

自動運転レベル4

レベル3では緊急時にはドライバーが運転操作を行うため、ドライバーはすぐにハンドルを握れる体勢を取ったり、安全に走行できているか、道路の状況や周囲の車などに注意を払っておく必要がありますが、レベル4になると「限定領域内」という言葉がつきますが、すべての操作はシステムが行います。限定領域内とは“高速道路内”や“平均時速50キロメートルの都市環境”など、自動運転が走行できるエリアを限定することを意味しており、あらかじめルートが決まっている路線バスや、空港内など特定の地域内を走行する送迎用のバス、広大なテーマパークなど商業施設内の交通手段となる小型タクシーといった移動サービスとの相性が良く、開発が進められています。なお自動運転レベル4は「高度な自動運転」と呼ばれています。

自動運転レベル5

自動運転レベル5は完全な自動運転を指し、走行エリアの限定がなく、いまの車と変わらず、どこを走行しても問題ありません。運転はすべてシステムが担当するため、ドライバーが不要になるだけではなく、ハンドルやアクセル、ブレーキなど運転席を設置する必要がなく、車内の空間デザインの自由度が格段に増すと言われています。
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アウディが開発した自動運転車とは?

2017年に世界に先駆けて開発された自動運転車は残念ながら、レベル2に相当するADASを実装する形での販売を余儀なくされました。いったいどんな自動運転車だったのでしょうか?

「Audi AIトラフィックジャムパイロット」の概要

Audi AIトラフィックジャムパイロットは、一定の条件下での運転の完全な自動化を実現したレベル3の自動運転に相当するシステムです。高速道路、もしくは中央分離帯やガードレールが備わった自動車専用道路で、車が時速60km以下で走行していて、前後に車両が詰まった運転の状態になった場合に、システムが運転操作を引き受けるというものです。なお、自動運転の条件が満たされたときには、ビジュアルサインによって、ドライバーにシステムが作動可能であることが伝えられる仕組みになっています。

同一車線のなかであれば発進から加速、ステアリング、ブレーキまで、すべての運転操作をドライバーに代わって引き受けてくれるため、アクセルペダルから足を離し、一定の状況下であれば、ハンドルから手を離すこともできます。もし他の車が割り込んできたときでも、支障なく対応してくれます。

アダプティブクルーズコントロール

現在、AudiのA3やA4モデルに搭載されている技術です。時速0kmから250kmの設定速度内で、前方車両との車間距離を自動で一定間隔に保ちつつ、速度調整しながら追従してくれます。もし前方車両が停止した場合には、自動的にブレーキもコントロール。
主に高速道路の渋滞時を想定した機能で、ミリ波レーダーや光学式カメラセンサー、ステレオカメラなどによって、前方の車両の状態を把握し、アクセル操作やブレーキ操作を自動で行ってくれるというものです。

アダプティブドライブアシスト

レーダーセンサーとレーザースキャナーによって、前方の車との距離を監視し、車間距離が詰まると、減速して安全な距離を保持してくれる機能です。もしも渋滞などで先行車が止まるときには、それに合わせて減速や制動を行い、停車まで操作してくれます。再度、動き出したときには、アクセルペダルを軽く踏むか、アダプティブクルーズコントロールのレバーを手前に引くと、車は再スタートしてくれます。

トラフィックジャムアシスト

中低速域ではアクティブレーンアシストが作動しませんが、アクティブレーンアシストとアダプティブクルーズコントロールを同時に使うことで、先行車との車間距離を維持する機能がトラフィックジャムアシストです。車線から逸脱しないようハンドル操作もサポートしてくれます。

アウディパークアシスト

パークアシストは、駐車が苦手な人に向けたサポート技術で、駐車可能なスペースを超音波センサーで探知させることによって、スペースに合わせた切り返しなどを自動で行ってくれる機能です。バックでの車庫入れ、前進駐車、縦列駐車などにも対応しています。
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アウディプレセンス

アウディプレセンスはA3クラス以上に搭載される予防安全システムで、複数のセンサーやカメラから情報を得ることで、衝突や事故の危険を予測してドライバーをサポートするというものです。具体的には自動ブレーキや、車線のはみ出しを警告・予防するアクティブレーンアシストがこれに当たります。

アウディプレセンスベーシック

アウディプレセンスベーシックは衝撃から身を守る態勢を整えるシステムで、たとえばシートベルトの拘束力を緊急時に瞬時に強めることで、乗員をシートにしっかりと固定します。また窓やサンルーフも自動的に閉じることで、サイドエアバッグの展開に備えるようになっています。

アウディサイドアシスト

車の後方やリヤバンパーにレーダーセンサーが内蔵されており、後方から近づく車両があれば検知するという仕組みで、車線を変更する時などに危険があれば、ドアミラーの内側のランプを点灯させて知らせてくれます。

アウディプレセンスリヤ

これは後方からの追突に備えた安全装備で、リヤバンパーに埋め込まれたレーダーセンサーが事故の危険を察知すると、シートベルトを巻き上げて体を固定したり、ハザードランプを点灯させることで、事故に備える機能です。サイドウインドーやスライディングルーフウインドウを閉じることで、車外への放出やガラス破片などが車内に侵入しないよう防ぐ機能でもあります。

アウディは自動運転レベル5の実用化も目指している

アウディはレベル5の完全自動運転もかなり早い段階で実現されると考えており、2020年から2021年には高速道路での実用化を目標にしていると言われています。

アウディの自動運転技術について知っておこう

アウディは世界で初めてレベル3の技術に到達するなど、高い自動運転技術を持つことで知られています。自動運転の動向を注視するなら、これからもアウディの開発に注目しておくと良いでしょう。