最終回の配信が目前に迫る韓国ドラマ『愛のあとにくるもの』について、見どころをレビュー!
(以下、物語の内容に関するネタバレを含みます)
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『愛のあとにくるもの』あらすじ
韓国から日本へ留学しチェ・ホン(イ・セヨン)と小説家を目指している大学生・潤吾(坂口健太郎)。二人は恋に落ち幸せな日々を送っていたが、異国で寂しい思いを抱えながら生活していたホンと、夢を追うのに必死な潤吾はすれ違いを重ねて別れてしまう。
別離から5年後、小説家となった潤吾は、韓国・ソウルでホンと再会。
イ・セヨンの陽と陰の演技にくぎ付け
『王になった男』では、民を想う優しい王妃を気高く演じ、『ルール通りに愛して!』では、変わり者の弁護士をエネルギッシュに魅せたイ・セヨン。多彩なキャラクターを演じるのに定評がある彼女が、本作では陽と陰の演技で視聴者をとりこにしている。
「自分探しをしたい」という理由で日本に留学してきたチェ・ホンは、大荷物を抱えて日本に住んでいる親友のジヒ(ミラム)の家に向かう途中、駅の改札を通る際に荷物をぶちまけてしまう。そんなホンを通りがかった潤吾が助ける。ほんの一瞬の出会いだったが、お互いに忘れられない存在となった。
ホンは日本での生活のためにラーメン屋でアルバイトをしようとするが、一人しか採用されない中、二人が応募。その相手が潤吾だった。偶然の再会に驚くが、一日トライアルでアルバイトをした結果、ホンが採用される。たった一日一緒に働いただけだったが、ホンは潤吾の優しさと誠実さに触れ、彼のことが気になるようになる。まわりの協力もあり、二人の距離は一気に縮まっていく…。
ホンを演じるイ・セヨンの演技が素晴らしい。潤吾と出会った頃の若くはつらつとした「陽」の演技と、潤吾と別れて傷つき韓国に帰国したあとの「陰」の演技の対比が見事なのだ。
本作では日本でのホンと潤吾、5年後に韓国・ソウルで再会した二人の場面が交互に描かれていく。イ・セヨンの陰の演技は、潤吾との別離後の5年間がいかにつらいものだったか切々と訴えてくる。過去のホンが明るく無邪気だからこそ、韓国に戻ったホンの暗さが身に染みる。
イ・セヨンは、日本語の台詞を難なくこなし、その上で視聴者を惹きつける演技ができるとは、改めて素晴らしい俳優だと実感した。そして舞台となった井の頭恩賜公園をランニングする彼女のはつらつとした美しさや、劇中に披露するウエディングドレス姿のまばゆさにファンは感嘆するだろう。
坂口健太郎が演じる不器用で心優しい潤吾
坂口といえば、韓国ドラマをリメイクした『シグナル 長期未解決事件捜査班』に出演し、韓国版でイ・ジェフンが演じたプロファイラー役を演じた。筆者は本作を見た際に、坂口がイ・ジェフンと雰囲気が似ていてハマり役だなと感じたのを覚えている。その印象があったので、今回が坂口にとって初の韓国ドラマというのは少し意外だった。
坂口が演じる潤吾は、口下手だけれど心優しい青年だ。思っていることを言葉にすることが苦手な彼が目指しているのは小説家で、社会経験を積むために数多くのアルバイトをこなしていた。
潤吾はとても優しく心からホンを愛していたが、一方で異国の地で孤独を感じているホンの気持ちに寄り添う余裕がなかった。小説家になる夢を果たすために必死で、ホンを愛しながら夢を追いかける器用なことができる男性ではなかったのだ。それは若さが理由でもあったし、潤吾の性格がそうさせた部分もある。
ホンが井の頭公園で怪しい人物に追いかけられて交番に逃げ込んだときも、けがをして病院に行ったときも、ホンの電話を潤吾は無視する。韓国ドラマでよく描かれるが、恋人の電話を無視するのは韓国ではご法度であり、間違いなくけんかの原因となる。ところが日本の男性は仕事が忙しいと妻や恋人の電話を無視して仕事を優先させるのが一般的だ。こうした日本と韓国の考え方の違いが、二人の溝を深めていく。
潤吾役の坂口が、実に上手く口下手な青年を演じている。「もっと自分の気持ちをホンにぶつければいいのに!」とやきもきする人も少なくないだろう。こういう青年を演じさせたら坂口はピカイチだなと思う。
潤吾の間に決定的な溝ができたホンは、勢いで韓国に帰ってしまう。それを引き留めようとせず、言われるまま荷物を韓国に送ってしまう潤吾の不器用さがもどかしい。ホンが愛用していたギターケースに何やら手紙を入れていたようだが、5年間ギターケースに触らなかったホンに潤吾の気持ちは伝わっていなかった。
こうしたさまざまなすれ違いがあったにも関わらず、5年後、運命のように再会した二人だが、相変わらず口下手な潤吾は、第4話が終わった時点ではホンの凍った心を解かすことができていない。
ホンを愛おしそうに見つめていた潤吾と、潤吾に精一杯の愛情をささげていたホン。
最終回に向けて、ホンと潤吾はどうなる?
第4話では、ホンの幼なじみで婚約者のミンジュン(ホン・ジョンヒョン)が人気小説家となった潤吾のサイン会に現れる。そして潤吾の元恋人カンナ(中村アン)は、潤吾と寄りを戻したいと熱烈にアプローチをしてきた。
今のところホンが潤吾に心を開いていく様子はないし、ギターケースの中にあった潤吾からの手紙を読もうともしない。4人の男女の関係が最終回に向けてどのように描かれていくのか、気になるところだ。原作どおりになるのか、サプライズがあるのか、残り2話の展開が見逃せない。
監督を務めるムン・ヒョンソン監督は、来日会見で「さまざまな感情が美しく描かれている」と本作を表現していた。監督の言葉どおりで、井の頭公園と京都といった日本の美しい風景や冬の韓国の美しさが、切ない音楽とともに映し出されているのがこの作品の魅力でもある。最終回まで、ホンと潤吾の恋の行方を美しい映像と音楽とともに見守っていきたい。
(文/咲田真菜)
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