■SLではなく、メルセデスAMG SL
日本時間10月28日23時、メルセデス・ベンツは新型SLを発表した。「R232」という開発コードネームを持つニューSLは、最初から「メルセデスAMG SL」である。
その理由は、ドイツ・アッファルターバッハにあるメルセデスのハイパフォーマンスカー開発子会社であるメルセデスAMGがゼロから開発したモデルだからだ。

【本国発表】メルセデス・ベンツのSLが約10年ぶりのフルモデルチェンジ! メルセデスAMGがゼロから設計し、PHEV登場も間近か!?


1952年に登場したレーシングカー、300SL(W194)のロードゴーイングバージョンとして1954年にデビューしたW198から数えて、8世代目となる新型SLは、先代のR231から約10年を経て大幅な進化を遂げた。

ボディサイズは、全長4705mm、全幅1915mm、全高1353mm(SL 63 4マチック+)で、日本にも導入されていた先代の最終モデルであるSL400と比較して88mm長く、38mm幅広く、38mm背が高い。ホイールベースは2700mmで、先代から115mmも伸びている。写真を見るかぎりは若干コンパクトになったように感じるが、それは新型が2シーターではなく2+2となり、キャビンが大きくなったためだ。

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新型SクラスやCLS、AMG GT 4ドアクーペなどに通じる、最新のメルセデスデザインを纏いながら、SLに特有のロングホイールベース、ショートオーバーハング、ロングボンネットのプロポーションにより、スポーティなアイコンに相応しいルックスを実現している。
また14本の縦スリットを持つフロントグリルはAMGモデルであることを主張。シャープに切れ上がったデジタルライトLEDヘッドランプとスリムなLEDリヤコンビランプがスポーティネスを一層際立たせている。

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■2+2が復活
航空機のコクピットをイメージしたというインテリアは、高品質な素材と徹底した作り込みにより、スポーティネスとラグジュアリー、そしてハイテクが見事に融合した「ハイパーアナログ」なデザインとなっている。エアコン吹き出し口はジェットエンジンのタービン状のデザインだ。ドライバー正面に備わる12.3インチの3Dデジタルメーターパネルは、CクラスやSクラスとは異なり、オープン走行時に反射を防ぐために周囲が囲われている。11.9インチのタッチディスプレイも、12~32度に角度調整が可能だ。


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ツインスポークデザインの最新世代AMGパフォーマンスステアリングホイールには、2つのカラーLCDディスプレイを備えたAMGステアリングホイールボタンを装備。これを回すまたは押すことで、「スリッパリー」、「コンフォート」、「スポーツ」、「スポーツ+」、「インディビデュアル」、「レース(SL 55 4マチック+はオプション)」と6種類ある走行モードや、パワートレーン、シャシーなど個々の機能のモード切り替えが可能となっている。

標準で備わるMBUXインフォテインメントシステムは、新型Sクラスにも採用された最新の第2世代で、直感的な操作ができ、高度な学習機能も備わり、多彩な機能を搭載する。ニューSLでは5つの専用表示スタイルを搭載し、「AMGパフォーマンス」や「AMGトラックペース」といった特別なメニューも備わる。

2001年まで生産された5代目のR129以来となる、「2+2」の4人乗りとなった点も新型のトピックだ。ただし、後席乗員は身長150cmまでとなっているので、実際には子供用といったところ。
ISOFIXチャイルドシートの装着も可能だ。

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ソフトトップの復活もR129以来である。従来のバリオルーフに代えて採用したソフトトップは、1平方メートルあたり450gと軽量ながら、3層構造で優れた遮音性能を実現。またバリオルーフから21kgの軽量化を達成した。開閉に要する時間は15秒で、車速が60km/h以下であれば、走行中でもセンターコンソールにある開閉スイッチ、またはタッチディスプレイの操作で開閉できる。ちなみにトランク容量は、ルーフオープン時が213L、クローズ時は240Lとなっている。


■流用一切ナシの新プラットフォーム
プラットフォームは、メルセデスAMGにより完全にゼロから開発された、複合アルミニウム構造の新しいロードスター用アーキテクチャで、先代SLやAMG GTロードスターから流用した部分はひとつもないという。アルミニウムのほかに、マグネシウムやカーボン、スチールなどを使用したボディは、先代比で捻り剛性は18%向上。またAMG GTロードスターと比較しても、横方向の剛性が50%、縦方向の剛性は40%もの向上を果たした。もちろん「SL(スーパー・ライトの頭文字)」だけに、ホワイトボディの重量は約270kgと軽量だ。

エアロダイナミクスも徹底的に磨き上げられている。具体的には低ドラッグと低リフトの完璧なバランスを目指して開発された。
ロアエアインテークグリルの裏とアッパーエアインテークグリルの裏に備わる2ピースのアクティブエアコントロールシステムであるエアパネルと、80km/h以上で5段階に可変する車両後部の格納式リヤスポイラーを採用した結果、Cd値は0.31というオープンスポーツカーとして理想的な数値を実現した。

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また、AMGドライビングモードで作動する、アンダーボディのエンジン前方に備わるカーボン製のアクティブエアロダイナミックエレメント(重量約2kg、オプション)は、80km/hで約40mm下向きに伸びてベンチュリ効果を発生。より正確なハンドリングと高いコーナリング性能を実現する。

■まずはピュアICEのV8から
搭載されるパワートレーンは、市場投入時にはスペックが異なる2種類のAMG製4.0LV8ツインターボとなる。SL 63 4マチック+が最高出力585馬力/5500~6500rpm、最大トルク800Nm/2500~5000rpmで、SL 55 4マチック+は最高出力476馬力/5500~6500rpm、最大トルク700Nm/2250~4500rpmだ。

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組み合わされるトランスミッションは、どちらも9速DCTのAMGスピードシフトMCT 9Gトランスミッションで、駆動方式は全車4WD。
走行状況に応じてインテリジェントに前後アクスルの駆動力を変化させる電子制御のAMGパフォーマンス4マチック+を採用し、あらゆる条件下で最適なトラクションと卓越したハンドリング性能、優れた安全性を実現している。動力性能は、SL 63 4マチック+が0→100km/h加速3.6秒、最高速度315km/h。SL 55 4マチック+は、それぞれ3.9秒と295km/hを実現している。

ちなみに、IAA(ミュンヘンモーターショー)で発表されたAMG GT 63 S Eパフォーマンス 4ドアクーペが搭載する、800馬力級のPHEV・パワートレーンは、後日トップグレードとして追加予定であることもアナウンスされた。

■本国発売は2022年予定
サスペンションは、前後ともアルミニウム製のダブルウイッシュボーンで、SL 55 4マチック+は高性能なアルミニウム製ショックアブソーバーと軽量コイルスプリングを備えた、新開発のAMGライドコントロールサスペンションを採用。SL 63 4マチック+は、アクティブ油圧アンチロールスタビライザーを備えた革新的なAMGアクティブライドコントロールサスペンションを搭載する。このシステムは、ロール量を数分の1秒で補正し、よりダイナミックな走りや直進性、乗り心地を向上させる。

【本国発表】メルセデス・ベンツのSLが約10年ぶりのフルモデルチェンジ! メルセデスAMGがゼロから設計し、PHEV登場も間近か!?


ブレーキシステムも新開発のAMGハイパフォーマンスコンポジットブレーキシステムを採用。従来より軽量かつコンパクトな設計ながら、優れた制動性能と正確なコントロール性を実現。冷却性能やパッドのクリーニング性能も優れ、一層高い安定性を手に入れている。

アクティブリヤアクスルステアリングも搭載した。後輪が100km/h以下では前輪と逆位相に、それ以上の車速では同位相に最大2.5度ステアし、俊敏なハンドリングと高速域での優れたスタビリティを実現する。

新型メルセデスAMG SLは、おそらくピュアICE搭載のSLとしては最後の世代になるだろう。市場導入は2022年と言われているが、日本上陸がとても楽しみな一台だ。

<文=竹花寿実 Toshimi Takehana>

■メルセデスAMG SL63 4マチック+(4WD・9速DCT) 
主要諸元(ドイツ本国仕様)
【寸法・重量】
全長:4705mm 
全幅:1915mm 
全高:1353mm 
ホイールベース:2700mm 
トレッド:前1660/後1625mm 
車両重量:1970㎏ 
乗車定員:4人 

【エンジン・性能】
型式:M177
種類:V8DOHCターボ 
総排気量:3982cc 
最高出力:430kW(585ps)/5500~6500rpm 
最大トルク:800Nm(81.6㎏m)/2500~5000rpm 
使用燃料・タンク容量:プレミアム・70L 

【諸装置】
サスペンション:前後ダブルウイッシュボーン 
ブレーキ:前後Vディスク 
タイヤ:前265/40ZR20/後295/35ZR20