白桃の皮を剥かずに、洗ってそのまま出す、あるいは、単に切っただけで出すと、たいていの人にギョッとされる。

で、「アバウトだよねー(苦笑)」などと言いつつ、目の前で皮を指で剥いて食べる人が、実に多い。

これ、個人的な性格のせいだと思われるのだが、昔から我が家では桃は「剥かずに食べるもの」だった。
特に、家族がみんなワイルドなわけでもなく、「皮を剥いてしまったらもったいない」というのが、その理由だ。

祖父母が農家をしていたこともあり、とれたての桃などは特に、「皮ごとガブッといく」のが断然美味いと幼い頃から聞いてきた。
また、自分の生まれた長野では、特に農家の人などは、桃を皮ごと食べる人が多かったのだが、残念ながら、よその人で皮ごと食べる人には、これまでほとんど出会ったことがない。
「皮が美味しいんだよ!」と力説しても、不思議そうな顔で見られるだけ。皮を剥いて食べるのって、やっぱり特殊なの?
全国農業協同組合連合会、岡山県本部の園芸部果実課に聞いた。


「岡山のほうでは、皮は剥いて食べる方のほうが多いと思いますが、皮ごと食べる方もたくさんいますよ。理由は、ブドウなどと同じで、皮と実の間の部分がいちばん甘くて美味しいからです」
皮を剥かずに食べる方法としては、布でこすったり、水でよく洗うなどして、産毛を落とすのが一般的だが、ブドウのようにいったん皮ごとかぶりついて、皮だけ出すという人もいるのだそうだ。

この「皮を剥く・剥かない問題」には、果実の堅さの好みもあるようで……。
「よく熟したやわらかい桃が好きという人には、皮を剥く人が多いかと思いますが、堅めの桃が好きな人の場合、皮ごとかじると歯ごたえもあるし、剥かずに食べることが多いかもしれません」と、桃農家の方も言う。
特に、桃が豊富にできる土地で暮らす人などは、カゴいっぱいにとれた桃を、水道水でゴシゴシ洗って、外で丸かじりする美味しさを知っているだけに、「皮は剥かないで食べたほうが良いよ」と、お節介ながら、つい口にしてしまうのかも。

「どうしても産毛が気になる」「桃の皮で口がかゆくなる」などと訴える人もいるし、無理強いするわけではないのだけど……。


単にやったことがないだけで、興味がある方は、ぜひこの夏、「皮を剥かずに」桃を食べてみてください。
(田幸和歌子)