東京に遊びに行った関西の知人が、カルチャーショック受けて帰ってきた。

お好み焼き店で食事をしたところ、お店のメニューに“天”がついていたというのだ。

「豚天」、「イカ天」、「ねぎ天」……と、この天とはなんぞやと聞いてみれば、「天かす」の略らしい。
天かすは入っていて当たり前じゃないかと憤慨したそうだが、関西のお好み焼きの代表的な表記である“玉”だって卵のこと。これだってお好み焼きの標準装備だ。

ちなみに豚玉なら卵入りで、豚焼なら卵抜きになるかと言えばそんなわけもなく、昔から続く大阪お好み焼きのお店に伺うと、
「戦後、まだ物資が不足している時代に卵入りと書くことで高級感を出した、と聞いたことがあります」
と、広告戦略的な理由での命名であったようだ。

とはいえ、呼び名は変われどお好み焼きの作り方はそう大きく変わらない。変わるとすれば、中身だろう。

地域によってお好み焼きの人気の具材に変化はあるのか、全国に展開しているチェーンのお好み焼き店に聞いてみると、全国を通じて人気の具材は“豚”だった。
豚のお好み焼きは、今も昔も変わらない鉄板具材だ。
しかし2位以下より、人気の様子が変わる。
関西は牛スジ、関東はイカ。さらに関西では牛玉やベーコンなどのお肉、関東ではイカに限らずタコやエビなどシーフードの人気が上々なのだと言う。

日本を関東と関西だけで分けてしまうのはいささか乱暴だが、なぜ東西で好みが分かれてしまうのか。

そこで関東のお好み焼き店に伺うと、
「お好み焼きを食事ととらえる人が少ないからだと思います。だから鉄板焼きのように食べられるシーフードが人気なのではないでしょうか」
関東でのお好み焼きの立ち位置はあくまでも“酒の肴”だと言うのだ。
言うまでもなく関西でのお好み焼きは、お好み焼き+白ご飯も成り立つ食事仕様。
シーフードでは少し心許なく、やはり豚やお肉などのガッツリとした食感、そして甘辛いソースが欲しい。
逆に関東では甘辛ソース味よりも醤油味のお好み焼きが人気。そこで、「あっさりとし、さらに醤油によく合うシーフードに軍配があがるのでは」と、お好み焼屋さんは言う。


さらに違いと言えば、お好み焼きの切り方にもある。
関東はピザのように切り分け、関西では食べるごとに一口サイズにカットする場合が多いとか。
これは関東は一枚を皆で分け合って食べる居酒屋方式であり、関西は扱いが食事のため基本一人一枚。自分の食べやすいよう切り分けるため、こういった差が生まれたのかもしれない。

流通が進んだ現代、日本全国どこに居たって各地のあらゆるものを食べられる。
だからこそ日本の食は平均化した……と思いきや、意外にも深い溝は残りつづけているようだ。


旅行、出張先でご当地名産物を食べるのも楽しいが、時には全国共通のメニューを食べてその違いを楽しむなんて、いかがでしょうか。
(のなかなおみ)