まぼろし、幻。それは現実にはありえないもの。
しかし、世の中には「実在する幻」がある……ご存知、しんきろうである。本当に見えるのに本当にはない、これぞ本当の幻だ。

しんきろうで有名な富山県魚津市では、ウェブサイトで一週間先までのしんきろうの発生確率を発表している。“今日のしんきろう発生確率は40%”ってな感じだ。こんなふうに数字で具体的に示されると、なんだか本当に見えてきそうな気がするから不思議。元々は市内有志で予報が出せないか、と検討していたものだそうで、現在は市が民間の気象情報会社に委託して予報しているのだという。
また、財団法人日本気象協会も独自に予報を行っており、こちらは新聞やテレビに発表されているのだとか。魚津に行けばきっと、どこかで一度は目にすることだろう。

そもそも、しんきろうはどうして起こるのか。光は普通、まっすぐに進む。が、暖かい空気と冷たい空気の境目を通ると曲がってしまう。曲がり方が一様ではないので、物が逆さまに見えたり、浮かんで見えたり、なが~く伸びて見えたりするのである。


富山湾には春、標高3015mの立山からの雪解け水が豊富に流れ込む。雪解け水が海面近くの空気を冷やすので、しんきろうが発生する……昔、何かの教科書で読んだ記憶があるが、実はそうではないことが近年わかってきたという。魚津埋没林博物館の石須さんに聞いた。
「立山の雪解け水には、富山湾上の空気を広範囲に冷やすほどの力はないんです。それに、しんきろうは雪解け水のあまり入らない琵琶湖でも見られます。高校の先生や富山大の教授らが研究したところ、日本海から富山湾に流れ込む冷たい空気の一部が陸上を通って暖められ、富山湾上で再び冷たい空気の上に合流してしんきろうが起こる、との説が有力になりました」
ただ、この説でもすべてのしんきろうが説明できるわけではないという。
まぼろしだけに、すべてが解明されてはいないのである……。

しんきろうの季節は主に春。見られるのは梅雨入りまでだという。晴れて気温が高く、北北東のそよ風の吹く日が狙い目。魚津市では、しんきろうの発生をメールで知らせる「しんきろう通信」を配信中で、観光客でも配信登録できるそうだ。そして、肉眼でもはっきり確認できるしんきろうが発生した時には、なんと花火が打ち上げられるという。
梅雨入り前に富山を観光する方は要チェック。観察には双眼鏡があるとよいです。
(R&S)