見た目のそっくり具合にも驚くが、食べてみると、味や歯ごたえも酢だこそっくり。
さらに、そのまんまのネーミング「酢いか たこのふりして」という不敵さも、なかなかどうして面白いではないか。
それにしても、なぜわざわざ「たこのふり」をしちゃったのか。イカのプライドを捨てたか。もしかして、イカのほうがタコより安いからとか?
企画・販売を行う福楽得に聞いた。
「当社では食品の企画・販売をしていますが、製造設備は持っていません。
出発点としては、もともと「タコのふりをしたイカの商品を作ろう」と意図したわけでなく、たまたまできたものが、「酢だこに似ていた」だけということ。
この商品が登場したのは、7~8年前。発売当初のネーミングは、「酢いかのくせに たこのふりして」であり、イカがタコの着ぐるみを脱いでいるキャラクターもパッケージにのせていたのだとか。
「これには、お客様からお電話があり、『ほのぼのしていて良い』といったお褒めの言葉をいただいたことがあります」
現状ではパッケージも変わり、ネーミングも微妙に変わったわけだが、そもそもなぜ試作段階で「こういう商品ができた」ということになったのか。
「もともとイカにもいろいろ種類があって、以前は日本近海でとれる胴体30センチほどのスルメイカやアルゼンチン、ニュージーランドでとれる同程度の大きさのものなどが加工品の原料として一般的だったのですが、不安定な時期がありまして。そこで、業界全体として、ペルーなど南米沖でとれる大きなイカを加工用原料として活用しようということになり、その1つの成功例として、この商品が誕生したんです」
たまたまタコに似ただけではあるが、もともとタコの値段は高いだけに、「結果的には高いタコの代用品になってもいますね」とのこと。
さらに、日本近海でとれるイカは、ここ数年は安定しているものの、ピーク時に比べると、漁獲量が6割程度になっているのだという。
タコのふりも、さらに、減ってしまった日本のイカのふりもしてくれる、海外のイカたちなのだった。
実は一時中断していたそうだが、1年ほど前に復活したという、この商品。
今後、さらに「○○のふりして」いろんな活躍をする日がくるのかもしれない。
(田幸和歌子)