実家の物置で、すっかり緑色があせた、懐かしいこたつを見つけた。

「昔は、こういうこたつが多かったよな。
天板を裏返して、緑の面でよく麻雀したなぁ。ウチでも家族で遊んでたもんな。ゲームとか、トランプとかやって。もっと昔だと、家族や親戚でも、集まったら麻雀やろうかっていう時代もあったんだよ」
と、50代の父。

「こういうこたつ、生まれて初めて見た。家で使ってないし、友達で持ってる家もないし。
裏返して何するの? ビリヤードの台みたいな素材だけど……トランプとか? 麻雀とか?」
と、10代の弟。

その昔、こたつの天板は、日常と遊びの切り替えスイッチだった。緑色の面にひっくり返すだけで、気分はすっかり遊びモード。でも今、このこたつを現役で使ってる家は少ない。裏返しても色が違うだけか、家具調こたつだと裏返すことさえできないことも多い。

主に麻雀で使われた、この緑色の布地面があるこたつって、今でも製造されているんだろうか。
以前にこのタイプを製造していたという、老舗家具メーカーに話を伺った。

「昔は作っていましたが、現在は製造していないですね。もう作らなくなって20年以上経つと思います。他のメーカーさんも、似たようなものかもしれません。今製造されているところは、ほとんどないんじゃないですか」
20年かぁ……そりゃ見なくなるわけだ。

1970年代の麻雀ブームから30~40年、麻雀人口は減り、家族で遊ぶことも減った。
需要が落ちていく中で、各メーカーは麻雀こたつの製造を続々と終了。家では新しいこたつに買い替えられ、麻雀こたつは姿を消していった。

そんな絶滅状態の中、復刻版ともいえる遊び用のこたつが、2007年に発売されていた。麻雀牌やカードが落ちないよう、縁を少しだけ高くする工夫が施された、その名も「ゲームこたつ」。一部に好評だったものの、市場は思った以上に狭く、わずか2年で製造終了。
現在、麻雀やゲーム用にと作られたこたつは、また絶滅へと向かっている。


これからまた復活することはあるんだろうか?
「今後も、麻雀やゲーム用のこたつを作る予定はないですね」(家具メーカー)

こたつの天板をひっくり返して緑色の面で遊ぶ……擦れと汚れで緑色はあせても、決してあせない冬の思い出。
みなさんの思い出に、このこたつはありますか?
(イチカワ)