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アンドロイド演劇「さようなら」の不思議な感動

それにしても不思議な光景だった。その不思議さは、アンドロイドに対する違和感というよりも、むしろ違和感のなさに由来する。
アンドロイドが、人間の様態に近づけば近づくほどかえって強い違和感や嫌悪感をあたえるという現象を、「不気味の谷現象」とロボット工学の世界では呼ぶが、そのようなことは一切なかった。
また、詩の朗読も、すこしも空々しいところがなかった。これは、機械による合成音などではなく、人間の俳優の声が使われていることも大きいのだろう。だが、どんなにすばらしい詩でも、読む人間しだいでは心が感じられないことがある。それを思えば、「ジェミノイドF」の朗読は十分に人の心を動かすものがあった。
もっとも、違和感を覚えなかったのは、私が観たのが客席のほぼ真ん中あたりと、ステージからやや離れていたということもあるのかもしれない。ふたたび機会があれば、最前列でも観てみたいところである。

アンドロイド演劇以前にも、ずっと昔から人形劇というものはあったし、日本にも文楽という伝統芸能がある。「ジェミノイドF」も人間が操作して演技をさせるという点では文楽人形と変わらない。しかし、アンドロイド演劇は、文楽とはやはり何かが決定的にちがうように思う。

文楽にかぎらず人形劇では一般的に、人形が人間の代わりにドラマを演じる。そこには人間の役者は登場しないのが普通だ。しかし今回の『さようなら』では、アンドロイドがアンドロイドの役をあたえられ、人間の役者と共演していた。

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