ついでにいえば、この史料館の裏庭は、京浜東北線や宇都宮・高崎線、さらに東北・上越・長野新幹線が間近に見られるという、なかなかのトレインビュー・スポットだったりする。
じつは、このうち京浜東北線と宇都宮線(東北本線の一部)も高崎線も、渋沢がその立ち上げに奔走した「日本鉄道」という会社(現在のJR東日本のルーツ)が建設したものである。自邸の庭から、みずから建設にかかわった路線を列車が走る様子を眺めるというのは、さぞ気持ちのよいものだったのではないだろうか。
さて、この渋沢について、アメリカの経営学者、ピーター・ドラッカーは「経営の『社会的責任』について論じた歴史的人物のなかで、彼の右に出る者を知らない」と評しているという。ドラッカーといえば、日本ではダイヤモンド社から多くの訳書が出ていることで知られる。最近では、「もしドラ」という大ヒットも飛び出した。
渋沢とドラッカーの関係がさりげなく示されるあたり、いかにもダイヤモンド社のムックだなと思わせるのが本書、『歴学 ニッポン株式会社を創った史上最強の男たち』(「週刊ダイヤモンド別冊」10月17日号。くわしい目次はこちら)である。
そのタイトル、また、西郷隆盛や伊藤博文などの肖像がならんだ表紙を見ると、“歴史のリーダーたちから経営術を学ぶ!”的なものかと一瞬思ってしまうのだが、中を開けば、本文がなぜか「です・ます調」だったりと、意外やソフトな感じ。何よりユニークなのは、都道府県別に郷土ゆかりの偉人が紹介されていることだ。そのセレクトも、幕末から昭和にかけて活躍した人物を中心に、政治家や経営者、文化人(なぜか文学者は少ないけど)とバラエティに富んでいる。