アニメファンのお祭りが地域ぐるみの文化祭そのものになる、そんなイベントに参加してきました。
「けいおん!」の舞台、豊郷小学校旧校舎群で10月30日に行われた「けいおん!」オンリーの同人誌即売会のことです。


18禁は一切頒布されない、子供でも参加できる健全なイベントです。マナーを守る礼儀正しい参加者、近隣の学生や子供も顔をのぞかせてワイワイ盛り上がるアットホーム感、同時開催された「あきのごはんまつり」では食べ物が完売して急遽おにぎりを炊き出すほどの大盛況。
人口8000人に満たない町に1500人近くの人が集まったのです。

滋賀県犬上郡豊郷町にある豊郷小学校旧校舎群は、「けいおん!」のヒロインたちが通っていた学校「桜が丘高校」のモデルとして非常に有名な「聖地」になっています。特に公認されているわけではないのですが、学校の構造から木造校舎の雰囲気までまるっきり同じ。

この建物、実は2002年当時は廃墟でしたので、取り壊しの話があがっていました。

しかしヴォーリズ建築と呼ばれる西洋式の外観の美しさもあって、町でなんとか守りたいという声があがり、一旦取り壊しが中止になります。その後2009年5月に役場で公共の施設として保全されることになります。まさに「けいおん!」放送真っ只中のことです。

公共の施設になってからは多くの「けいおん!」ファンが聖地巡礼で訪れるようになります。そこで、6月には豊郷の商工会青年部で「けいおん!でまちおこし実行委員会」が結成され、観光協会が全面的にバックアップをはじめます。下の写真にもありますが、近畿地方に立っている「飛び出し坊や」の「けいおん!」キャラバージョンもこの商工会と有志のファンによるの手作り。


もちろん、この場所はあくまでも公共の施設です。アニメファンが自由気ままになんでも出来る場所ではありません。しかし、今まで観光客が来るような場所ではなかった地区までわざわざ来てくれたのだから少しでも楽しんで欲しいと、施設側の好意で「けいおん!」に関わる展示が商工会を通じて行われるようになりました。

豊郷小学校旧校舎群見学に関して
「けいおんカフェ」が開かれ、「けいおん!」で使われている楽器やイラストの展示もされはじめます。多くのファンの手書きメッセージも多数集まってきました。グッズもTBSの許可をとって販売されるようになります。


そして9月以降観光客も一気に増え、商工会の協力でアニソンライブやキャラクターの誕生日パーティーなどのイベントも開催されるようになりました。最初のうちは小規模でしたが次第に話題は広まり、観光協会と有志のファンによって様々な企画が立ち上がります。
最初はアニメを知らない地元の人からしたら何が起きているのか分からないですから、当然戸惑いもあったようです。しかし商工会の努力によって町の理解が広がり始め、今や「けいおん!」の聖地としてすっかり定着しました。

実際にアニメの舞台になっている場所で同人誌即売会をする、という例自体は今まで数例しかありません。ましてや場所は昔使われていた木造校舎なので、一つ一つの教室も小さいです。
そこに運営スタッフ60人、商工会80人、サークル参加者160人、一般参加者1200人以上。

車は密集すると近隣に迷惑がかかるため、敷地内に入ることは出来ません。町の所有物なので地元商工会の全面的な企画協力が必要になります。少しでもトラブルが起きたらイベントそのものが中止にもなるでしょう。ファンであるぼくですら正直「危ないんじゃないか?」と思ってハラハラしながら参加しました。

しかしそこで目にしたのは、遠くから集まったたくさんのファンと地元の人達が、みんな笑顔になっている光景。
ぼくはサークル側で参加したのですが、子供連れの方も多く、会場になっていた教室はどこもびっちり。外ではみんなが豊郷のごはんを食べている。
これは「けいおん!」人気とファンの熱意だけではなく、建造物を守りたいという町民の思い、イベントを企画した有志スタッフ、そして迎え入れる体制を作った地元の人の多大な努力あって成立した、本当に珍しい例です。

まだまだ偏見も多い日本各地の「アニメ聖地町おこし」ですが、大切なのは人との触れ合いとマナー。気になったらまずは行ってみようよ。なかなか、あったかいですよ。
(たまごまご)