裸で警察に追われている時。
夜の海辺でホームレスに歌ってくれと頼まれた時。

ヤクザの事務所に連れていかれた時。
好きになったお姉さんがエッチな事をさせてくれると言ったのに急に彼氏と新幹線で旅立った時。
彼は歌う。魂を吐き出すようなエクトプラズムな歌を。
彼は叫ぶ。鬱屈した日々を打ち破る様に。


2010年の週刊ヤングジャンプ27~34号で「日々ロック」という高校生のバンド漫画が短期集中連載していた。
昨年10月には単行本1巻も発売している。
なんと1巻の帯には『ROOKIES』『べしゃり暮らし』の森田まさのり氏がコメントを。
たまにエキレビライターのレイズナ『ろくでなしブルース』のモノマネを見せてくるが黙って見守っている。
その「日々ロック」が2月3日発売の週刊ヤングジャンプ10号で第二部の連載をスタートしたと聞いちゃあおじさん黙っちゃいられないよ!
母ちゃん赤飯炊いとくれ! あいよ父ちゃん!

今回はこの『日々ロック』について語ろうと思うのだがまず初めにこれだけは言っておきたい。
最近、バンド漫画のレビュー等を見ているとエキレビでもかなりそうなのだがやたらと「けいおん」を引き合いに出す人が多い。

もうやめようぜ! かっこ悪いぜ!
「けいおん」のネームバリューでアクセス数を稼ぐんじゃなく自分の文章力で記事を読んでもらおうぜ。
だから僕はこの記事ではやたらに「けいおん」「けいおん」言わない事に決めた。
「けいおん」って言わない。
やれ「澪かわいい」だの「あずにゃんぺろぺろ」だの「ごはんはおかず」だの大の大人がみっともない。
タイトルも「けいおん」を思わせないような物にしよう。
僕は「けいおん」なんて言いませんよ。
「けいおん」なんて。
え? 「けいおん」じゃなくて「けいおん!」だって?
ビックリマークが要るの? んもうっ!

内容はモテないサエないダサいありがちーな高校生がバンドをやるという話だ。
絵は汚いし、すごく雑。なんならちょっと気持ち悪いくらい。
え? 「だったら俺は『BECK』を読むぜ!」って?
まぁそう言うなよ、俺の話を聞けって! そこがお前の悪い所さ!
主人公の日々沼拓郎はいざとなったらやる男!
窮地に立たされるとなんだかワケの分からない歌を歌う。
拓郎の歌はまるで「俺はお前だ、お前は俺だ」と言うような。

誰もが持ってる心のしがらみをお前だけじゃないぜ? 俺もだぜ?
いいや、ここにいる俺たち全員がそうなんだぜ?
と語りかけてくるように。
人々は思う、もっとあいつの歌が聴きたい。

……とは言うものの普段の拓郎の歌はてんで駄目だ。
もうゴミ。誰の心も燃やせない、まさに燃えないゴミ。
いつもライブハウスや駅前で歌っても誰にも見向きもされない。

まるでドラえもんの石ころ帽子でもかぶっているかの様な空気っぷり。まさに路傍の石。
見られたところでクスクス笑われるのが関の山。
違うんだなぁ。
拓郎の歌はお前達リア充が聴くような代物じゃないんだよ。
拓郎の歌は土壇場にこそ、その力を発揮する。


マンガなのに読むと聴こえてくるのだ。
その歌が。メロディーが。リズムが。
感動して体がブルブル震える。なんかそんなダイエット器具があったなぁというくらい震える。僕は。

第2部はその1巻の最終話の約1年後。とある1日から始まる。
1巻で起こした事件のせいで留年した拓郎はそろそろ進路を決めなければいけない事に気づく。
一緒にバンドやってる奴はすでに就職が決まっているという時期にだ。
進学か?就活か?っていうか間に合うのか?
もう実家の八百屋を継ぐしかないのか?
そしてバンドは続けられるのか?
様々な悩みが交差しながら始まった第2部。
いかれた主人公と狂った仲間達、なんにも分かっちゃいない大人達に囲まれてこれから拓郎はどうなっていくのだろうか。

今度は何をおっぱじめるのか……。
進め拓郎、親が泣いている! (渡りに船)