募金には、いろいろなカタチがある。
街頭で募金する、インターネットで募金する、募金つきの商品を買う……。

これまで、どんな「募金」を経験したことがあるだろうか?
今、あらためて注目したいのが、「無印良品の募金券」の試みだ。
「募金券」とは、無印良品のネットストア内で、10円単位の募金ができるサービス。
利用者は6つの団体から寄付先をえらび、お買い物を楽しむ感覚で募金に協力することができる。

利用する側にとっては、10円という少額から募金ができるというのは、とても便利だ。
しかし、インターネットを経由した募金では、決済手数料やシステムをつくるために多額のコストがかかってしまい、少額募金を受け付けにくいという実情があった。
「無印良品の募金券」は、WEBでできる「少額募金」の実現に成功した数少ない例といえる。

(株)良品計画の環境広報担当課長、赤峰さんにくわしく話をうかがった。

無印良品という会社には、「社会・環境にやさしいことをしている」という企業イメージがある。CSR(企業の社会的責任)活動については、どのように取り組んできたのだろうか。
「無印良品のCSRの歴史は、2002年にさかのぼります。その頃、会社としても無印良品らしいCSRの取り組みを始めようという動きが始まりました。
ちょっと変わった社風の会社で、2年ほどの試行錯誤の末、CSRについても、社会一般的なやり方ではなく、“現場が、本業として取り組む”という方針となりました。

たとえ社会、環境に良くてもコンセプトに反することはやらない、品質を損なうものはやらない、というコンセプトを貫いてきたことも、特徴的なところだと思います」

会社で働く社員たちも、社会に貢献している会社で働いている、という自負を持った社員が多いのだそう。自分からどんどん物事を動かすような社員が中心となって、これまでも色々なプロジェクトや商品が生まれてきた。
「無印良品の募金券」のプロジェクトも、ソーシャルメディアの活用などで有名なWEB事業部長、奥谷さんが案を出し、CSRを担当する赤峰さんとゼロからつくりあげたものだ。

「少額募金をやりたくても、ネット決済のしくみがハードルになって実現できない……というNGO・NPOの悩みに対して、われわれは、“しくみ”を提供すること・情報発信をすることでお手伝いをしようと決めました。
私たちには、ネットストアという物販のしくみがあったので、そのしくみを利用してもらおうと思い立ったんです」

寄付先の選定については、クリック募金サイト「クリックで救える命がある」を運営する、株式会社ディ・エフ・エフに協力を仰いだ。
「募金券」で募金できる寄付先団体は、全部で6つ。
国内外で「地球環境」「子ども」「女性」「地域社会」といったテーマに取り組む団体が選定され、3カ月を目処に入れ替わる。
「私たちは、募金券も商品のひとつと考えています。
商品の価値はお客様が決めるもの、という考えがもとにあるので、寄付先の選定も、“広く”ということにこだわりました」
募金券のスタートは2011年、2月24日。
「はじめは、この企画自体、こけるんじゃないかとひやひやしていました。それでも、スタートからたくさんの方々にご参加いただいて……今は、募金券の良さに共感していただけたのかな、と思っています」

3月11日、東日本大震災がおこって以降、お客様や店舗スタッフから「被災地への募金を受け付けないのか?」という声が多く寄せられた。しかし、すべての店舗で募金を実施するには、金銭をどう管理するのかという問題がある。

「実は震災後すぐに奥谷と相談して、募金券のしくみを使って支援金を受け付けることにし、14日の17時には受付をスタートすることができていました。そこで、無印良品での募金活動はすべて募金券に集約することにしました。
正直、この募金券のしくみがなかったら、震災後の対応にはもっと時間がかかっていたと思います」
ジャパン・プラットフォームへ寄付されるこの「募金券」は、開始からすでに、7,700人もの人が利用している(※2011年5月23日現在)。「少額募金」という困難な分野にあえて挑戦した、無印良品の快挙といえるだろう。

5月28日(土)より、新しい6つの寄付先が顔をならべ、新しい「無印良品の募金券」がスタートする。新しい寄付のカタチ、ぜひこの機会に体験してみたい。

(木本一花)