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「スイシン」と「ハンタイ」安易な二項対立を回避するために。『私たちはこうして「原発大国」を選んだ』

高校時代にその著書を愛読していて、その後も新刊が出るたびに買い求めたり、あるいは旧著をことあるごとに読み返すという書き手というのは、意外と少ない。ぼくにとって、武田徹はそんな数少ない書き手のひとりだ。この人の『ジャーナリストは「日常」をどう切り取ればいいのか』と、「ニュー・エイジに贈るジャーナリズム讀本」を謳った「Quick Japan」の創刊準備号がその後の私の進路を決めたといっても過言ではない(とはいえ、いまではかなり遠いところに来てしまったという気もしないではないけれど。ま、それはともかく)。

『ジャーナリストは「日常」をどう切り取ればいいのか』は、「電通報」に一年間(1991年4月から92年3月にかけてというから、ちょうど20年前)連載されたコラムをまとめたものだが、いま読むとその後の著者の仕事の原点ともとれそうな記述もあって興味深い。たとえば、「エイズと人権思想」という一編での、エイズへの対処法として感染者の隔離を行なうべきか否かという問いは、後年の『「隔離」という病い』の片鱗を感じさせるし、「ジャーナリズムは好戦的か」というコラムのタイトルに掲げられた問題提起は、そのまま『戦争報道』という著作に引き継がれているように思われる。

この本に収録されたコラムのなかでも、刊行当時ぼくが読んでかなり衝撃を受けたというか、目から鱗が落ちたのは「人間爆弾の思想」という一編である。ここで武田は、執筆当時、韓国で繰り返されていた反体制学生運動家による焼身自殺に対して嫌悪感を示していた。《彼等にしてみれば個人の自由を圧殺する全体主義的現政権に抗議しているつもりだろうが、自分をより良き社会のための犠牲にするという発想が成立してしまうこと自体、実は広義の意味において全体主義的なのだと僕は思う》というのだ。

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