review

「スイシン」と「ハンタイ」安易な二項対立を回避するために。『私たちはこうして「原発大国」を選んだ』

全体主義に反対しているはずが、けっきょく全体主義と同様のことをしているという矛盾。こうしたねじれた構図を、原子力エネルギーをめぐる議論のなかに見出したのが、先ごろ新書として復刊された『私たちはこうして「原発大国」を選んだ 増補版「核」論』である。同書で武田は、「ハンタイ派」と「スイシン派」が互いに主張を譲らず対立を続けることが事態を膠着させ、いずれ共倒れとなり、けっきょく守るべき安全を失うと警告していた。

共倒れとはどういうことか。具体的にはたとえば、より安全な原発の制御技術の開発をめぐる議論があげられる。福島第一原子力発電所の事故は、津波によって非常用電源装置が浸水、このため原子炉に冷却水を送る電動ポンプが停止し、原子炉の温度が急激に上昇したことで発生した。これに対し、1970年代にスウェーデンで研究が始まった新たな原子炉では、外部からの冷却水注入にポンプなどの動力を必要としない。万が一冷却水が失われても、容器内外に圧力差が生じ、外のプールから水が注入されるなど、設計構造そのもので安全性が確保されるようになっている。こうした新設計炉技術の研究は、日本でも1993年に着手されたものの、その成果はほとんど報じられていない。なぜか?

《というのも反核運動の高まりの中で原子力発電の新規立地を確保すべく奔走している電力関係者は、現状でも「十分に安全なのだ」と理解して貰いたいと願っている。だからこそ、「今以上に安全な炉」の情報が広く伝わると、「それでは今の炉は安全ではないのか」と思われてしまうことを恐れる。だから最新の安全炉研究成果が流布することを嫌うし、更にはそうした研究開発への着手そのものをも敬遠してしまう――》

編集部おすすめ

あわせて読みたい

レビューの記事をもっと見る

トピックス

今日の主要ニュース 国内の主要ニュース 海外の主要ニュース 芸能の主要ニュース スポーツの主要ニュース トレンドの主要ニュース おもしろの主要ニュース コラムの主要ニュース 特集・インタビューの主要ニュース

レビューニュースランキング

レビューランキングをもっと見る
お買いものリンク