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ラーメンは民主主義のメタファーなのか?『ラーメンと愛国』

あるいは第4章でとりあげられる田中角栄にとって民主主義とは、公共事業を通して中央から金を流すことで自党の支持層を拡大するという類いのものだった。田中がつくったシステムは、国内産業育成の原動力となる一方で、それぞれの土地に根ざした観光資源を軽視し日本全国どこへいっても画一的な風景が生まれることになった。本書ではその過程が、各地のご当地ラーメンの登場・進化の流れとパラレルであったことを指摘する。

さらに第5章では、近年、カルト的なファン(彼らは「ジロリアン」と呼ばれる)を増やしつつあるラーメンチェーン「ラーメン二郎」について、そこに通いつめるジロリアンたちが同チェーンに理念の体系みたいなものを見出し、そのなかから勝手にルールをつくり出してそれに則ったゲームを行なっていることに注目する。いわば彼らは「ラーメン二郎」というゲームを、ネットなどを介してコミュニケーションの材料としながら消費しているのだ。このようなコミュニケーションと結びついた消費活動は(AKB48の「選抜総選挙」などにも同様のことがいえそうだが)、民主主義の将来を示唆しているとも考えられるのではないか。

それにしても、こんなふうにラーメン=民主主義というふうに考えていくと、矢野顕子「ラーメンたべたい」の、“わたしはわたしのラーメンを責任をもって食べる”という意味の歌詞も何だか意味深長なものに思えてくる。最近では、「ラーメンポエム」ともいうべき手書きの広告コピーの掲示されたラーメン店も増えているようだが、やっぱりラーメンは他人にとやかく言われることなく、「ひとりでたべたい」ものである。(近藤正高)
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