もちろん東北の大きな被害にあった被災者にとってもそうですが、日本人の大多数が地震と津波と放射能の恐怖に晒されているのが事実。
まともに地震の話をしようとすると空気はどんより重くなりますし、軽く笑い飛ばしたら「不謹慎」と誰かに言われたり誰かを傷つけてしまう。実際昨年の3月、テレビで延々と流れる衝撃的な映像を見て心がざわめいた人、原発の話題を見て食べ物に不信感を持った人、多くいると思います。
つまり、日本人は大小の差こそあれ、みんな被災者なんです。
鈴木みその『僕と日本が震えた日』は、ルポコミックの雄である筆者が3月11日の震災の影響について様々な角度から取材し、現実を描いた作品です。
この本最大の特徴は感情を交えず、まずは事実を知るというスタンスであることと、目立った大きな被災地も、身近なところも両方見ている、というスタイルであることです。
どうしても、東北の荒れ果ててしまった瓦礫の山や、原発周辺区域の惨状に目が行ってしまうのですが、東日本大震災の影響はもっと多方面に及んでいるわけです。逆に「震災の影響」だと思っていたことが、根はそうじゃないという部分もある。感情的に「震災怖い!」が先走ってしまうけれども、まずは現実をしっかり論証していこう、というマンガなのです。
たとえば、身近な震災の一つ、出版。
東北の製紙工場が壊滅的な被害を負って、書籍の印刷が間に合わなくなった、というのはリアルタイムで経験された方も多いと思いますが、「あれ? じゃあ他のところから持ってくればいいんじゃないの?」となりますよね。