外務省領事局が発表する『海外在留邦人数調査統計』によれば、イギリス、ドイツに次いでヨーロッパでは多く日本人が暮らす国フランス。その首都パリでも花見の習慣は絶えていない。開花時期になると、パリ中の日本人が皆同じ場所に殺到し、まるで花見の名所・上野公園と化すのだ。
大集合する場所というのはパリ市南の郊外、オー・ド・セーヌ県にあるソー公園。181ヘクタールの広さを持ち、園内はヴェルサイユ宮殿の庭園も手がけた、アンドレ・ル・ノートルによってデザインされた美しい風景が広がる。園内には大量の八重桜が植わっている一画があり、そこが恒例行事の会場となる。
まず公園内の桜の開花が確認されると、学生、社会人など各日本人コミュニティでそれぞれ花見を企画しはじめる。そして週末になると、各人誘い合わせて集まってくる。目的地は皆共通しており、桜の木が大量に植わっているここソー公園なので、結果的にパリ中の日本人が集うことになる。
桜の下にいるのは日本人、およびその知人である日本に興味を持つフランス人が大半のため、飛び交う言語の大部分は日本語。敷物を広げ弁当を開け、アルコール片手に楽しむ様子はまさに母国日本の花見だ。一年に一度、公園内の花見で顔を合わせる人もいたりして、ちょっとしたパリ日本人社会の社交場にもなる。その光景は花が散るまでの約2週間、各週末に繰り広げられる。