このカカオパン、どこのパン屋でも取り扱っているわけではない。商品として店頭に置いているパン屋はまだパリ市内でも限られる。早速、同パンを販売しているマリー・デリス(Marie Delices)とセッコ(Secco)へ出かけ、それぞれの商品を食べ比べてみた。
マリー・デリスはパリ市内18区に店を構える。18区はアフリカ系移民が多く住む地区として有名だ。典型的なフランス食材であるパンと、これら地区のイメージは合わないように思われるが、じつは18区はかなりのパン激戦区だ。まずマリー・デリスがあるジュール・ジョフラン駅近くには、今年度バゲットコンクールでグランプリに輝いた店セバスチャン・モウヴューがある。また2駅手前のアベス駅には、昨年度の同コンクールでグランプリを獲得したオ・ルヴァル・ダンタンも位置している。
マリー・デリスのカカオパンは、トラディションと同じ形・長さをしており、色以外の外見は普通のトラディションと変わらない。トラディション特有の堅い表皮をかじって中身に達すると、通常のトラディション以上に口の中へ柔らかさを伝えてくれる。カカオを練り込んだ生地が中身に濃厚さを加えるためだ。同時に、表層に混ぜられた粒チョコレートが口内の体温で溶けて、その柔らかさと濃厚さは、さらなる広がりをみせる。パンとチョコレートという、典型的ともいえる二つのフランス食材が、それぞれの良さを見事に引き立てられ、完全なマリアージュに達している。