かつて筆者が小学生だった頃、アニメ「ドラゴンボール」が「ドラゴンボールZ」に改題されることになってはじめて学んだ雑学だ。
なんでこんな話をしているのかというと、我らが『花のズボラ飯』が、これまた我らの倉科カナちゃんでドラマ化される、というニュースを聞いて、最新情報を知りたくて先週発売された掲載誌『エレガンスイブ』をめくってみたら、「Z」の文字が想いっきり踊っていたからだ。
マーシャルアーツの達人・嫁の風音と、合気道の師範・姑の梨々依が繰り広げる嫁姑のいざこざを破天荒に描いたアクションコメディ『嫁姑の拳Z』と、毎度バカバカしいネタをまじめに掘り下げる記事が定評のニュースサイト「デイリーボータルZ」のコラボレーション漫画が掲載されていてビックリ。これぞ正に最強×最強の組み合わせじゃなかろうか。
コラボレーションのテーマは「バク転」。
あー、こりゃあれだな。
詳しくは先週発売されたばかりの『エレガンスイブ』と「デイリーポータルZ」の特集記事をご覧いただきたいのだが、『嫁姑の拳Z』ではバク転を使ってよくぞここまでくだらないネタを思いつくなぁと感心し、「デイリーポータルZ」では、大の大人がマジメにバク転に挑み、だんだんと巧くなっていく過程に関心させられました。
さて、『嫁姑の拳Z』だ。
『嫁姑の拳』から改題され、先日コミックス2巻も発売されたばかりなので、気になった方はぜひこちらもチェックいただきたいのだが、2巻では主人公・嫁の風音がいよいよ宇宙にまで進出し、破天荒さにますます磨きがかかっている。宇宙空間におけるあれほどの暴れっぷりは、恐らく『魁!男塾』の江田島平八以来ではなかろうか。
その一方で、漫才ネタだったり、今回のバク転のように、半径の小さな世界の中でもしっかりおバカなネタを繰り広げていて、その振り幅の大きさに驚かされる。その裏にあるのは、『Z』改題以降、この漫画自身が「限界への挑戦」「できないことなんてない」というテーマに挑んでいるからな気がしてならない。実際、漫画の中のセリフの端々にもそんな意識が感じられるのだ。
2巻の中で、漫才に挑む女性に対し、姑の梨々依さんが次のように諭すシーンがある。
「途中であきらめたらできるものもできなくなっちまう…でもねえ不思議なもので最後まで諦めなかったら「諦めない」という強い思いが自分の中にない力を引き出してくれるんだよ」
今回のコラボ漫画でも「男は時として たとえできなくても やらなきゃいけない時がある」と、同じようなセリフが登場する。
キャラクターに語らせることで、作者自身が「できないことなんてない」というテーマを再認識しているんじゃないだろうか。
コメディにおいてそもそも、何かを制限するなんていうのが一番の御法度であることはわかっているが、それでも、連載を重ねていくことで段々とエネルギーが弱まり、限界値が少しずつ狭まっていった例はこれまでも数多ある。そんな先例への挑戦の姿勢が感じられるから、『嫁姑の拳Z』は面白いのだと思う。
まあでも、『エレガンスイブ』を読んで改めて思ったのは、倉科カナたんはZ級にかわいい、ってことなんだけどね。
(オグマナオト)