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ソーシャルゲームにもうちょっとがんばってもらいたいこと『拡散性ミリオンアーサー』

ソーシャルゲームにもうちょっとがんばってもらいたいこと『拡散性ミリオンアーサー』
『拡散性ミリオンアーサー画集』はソーシャルゲームとしては非常に珍しい、全カード(5月分まで)が収録された画集。コンシューマーの考え方でソーシャルゲームを作ったため、とんでもなく不思議な、他のソシャゲと似たようで違う不思議なアッパー感あふれるゲーム。画集を見たら、今のソシャゲが抱えている問題点が見えてくる?
スクエニから『拡散性ミリオンアーサー』の画集が出ました。
ゲームの画集自体は珍しいことではありません。特にスクエニは多いです、『ロード・オブ・ヴァーミリオン』とか。
しかし、これはちょっとすごいんですよ。
というのも、ソーシャルゲームの画集って今までほとんど出ていないんです。
全カード(2012年5月まで)が完全な形で、大きく掲載されています。これ非常に珍しいんです。
なぜそんなに珍しいか。その例の一つにほとんどのソシャゲにはスタッフ表記がないというのが挙げられます。

●どんなゲームなの?
まず『拡散性ミリオンアーサー』の簡単な説明をします。
スクエニの開発したiPhone、Androidで遊べるソーシャルゲームアプリ。本体プレイは無料で、アイテムやガチャで課金します。
『アーサー王と円卓の騎士』を題材にした超未来ファンタジー。文明が非常に進歩した世界が謎の崩壊をとげた後の世界の話。
エクスカリバーを抜いたものがアーサーとして新たな王の資格を得るのですが、これがすぐ抜ける。その数100万人
ようは、王の器を持つものはそれだけおり、あとはお前ら次第だよ、というゲーム。
面白いじゃないの。

基本、攻撃デッキを組むカードゲームです。
アーサー王はプレイヤー。カードは円卓の騎士なんですが、これが人間じゃない。
人の因子から作ったクローン。なので名前に「試作型」「第二型」などの名前が付いています。
クローンなら死んでも合体させても、平気でしょ?
うーん、これはなかなか業が深い。
技の名前が「選別剣=全域裁定(フラットジャッジ)」と偉いかっこいいなあと思ったら、『とある魔術の禁書目録』の作家、鎌池和馬がストーリーを作っていました。
加えて壮大そうに見えて、イベント一つ一つは底抜けに脳天気でライト。なんだこのPOP感。
お、おう……面白いじゃないの。

単独アプリなので、ちゃんと音楽もありますし、ムービーもあります。最近アプリ型ソシャゲ増えましたね。
あって当たり前の音楽も、モバゲーやGREEだとありません。
音楽は『日常』などを手がけていたヒャダイン(前山田健一)。アニメーションはJ.C.STAFF。
イラストは全体的に萌えでも耽美でもなく、「かっこいい+かわいい」という、アニメやpixiv文化の流れを引いています。
キャラクターボイスには釘宮理恵、喜多村英梨、佐藤利奈などこれまた豪華。
「たかがソシャゲ」じゃない、一大プロジェクトなんです。

●『拡散性ミリオンアーサー』画集の面白さ
さて、プレイヤーが集めるのはその騎士カード。正確には「妖精」と呼ばれる別のカードもありますが、9割方が騎士です。
このイラストをあらゆるイラストレーターが描いているんですが、これがもうね、ちょっと他のソシャゲでは考えられないくらいに豪華。
メインの一人でもある田中雄一は、『とある科学の超電磁砲』のキャラデザ。
また『狼と香辛料』の文倉十、『サモンナイト』の黒星紅白、『じょしらく』のヤスなど、ちょっとメンツがおかしいです。
まあ、やってない人には、好きなイラストレーターの絵数枚しかないよ!っていうごった煮状態なので物足りないかもしれません。ゲームをやっていた方としては大きな解像度できちんと絵が見られるのはありがたい。

ぼくがこのゲームと画集を評価したいのは、それらイラストレーターの名前をちゃんと明記していることです。普通なら当たり前ですね。
しかし、現時点でソーシャルゲームでイラストレーター明示しているのってすごい少ないんです。最近になって『クロス・レジェンド』『戦国武将姫MURAMASA』などちょっとずつ増えてきました。
中には自分のサイトやpixivで「これこれのゲームのイラストに参加しました」と言えるものもあるようですが、ほとんどは買取り。
描いたことを口外できないソシャゲは多いのです。となると、権利譲渡。

エニックスは以前から、クリエイターの名前を出していました。
それを引き継いでいるので、このゲームもイラストレーター名は完全明記しています。
プレイヤーは「これ誰が描いているんだろう?」となるのは当然のこと。イラストレーター表記は会社それぞれの契約が違うのでひとくくりにはできません。
それでもねえ。やはりイラストレーター表記ないのは妙です。せめてスタッフ一覧みたいなのはないの?って。
そこはソシャゲ文法ではなく、今までのゲーム文法で作られています。
当たり前のゲームの作り方が、ソシャゲ世界では当たり前じゃない。今のソシャゲとコンシューマゲームのいびつな関係が、この画集であぶりだされます。

●成長し続けるミリオンアーサー
画集は、できれば成長前も大きく載せて欲しかったですが、これだけしっかりした作りならばっちりです。
(ゲーム内では入手した時とレベルマックス時でイラストが変わります)
スクエニが力を入れて「こういうゲームにしたい!」という部分は、ガッチリつめ込まれています。
クローン騎士のギミック、イラスレーターが個性をだして描いたイラスト。大作らしさは味わえます。

で、プレイヤーならこれで満足できるはずなのでオススメできるんですが、ソシャゲ体験のない人がRPGをイメージするとモヤっとするかもしれません。
これだけのイラスト、シナリオ。さぞかし面白いだろう! と思ってプレイをしはじめたはいいものの、やるのはポチポチ歩く。
ゲーム内のマンガ『弱酸性ミリオンアーサー』でも歩くだけシステムについてはネタにされていました。

妖精「よっしゃ!ちょっとそこら辺歩ってみよっか。な!」
アーサー「はぁ……」パシャパシャ
妖精「エリア1……クリア!!! ほんと大した奴だよお前は!! うおーッ」

ほんとこんな感じ。レベル上げは歩く。敵(妖精)とエンカウントするには歩く。とにかく歩く。
ストーリーは全く別のところでアドベンチャーゲームとして楽しめます。
ストーリーのあるソーシャルゲームもそこまで数が多くないので、これは売りの一つなんですが、いかんせんストーリー読むにはレベルを上げなければいけない。
レベルを上げるには歩かないといけない。パシャパシャ。

コンシューマゲームなら「物語部分」と「レベル上げ部分」をミックスできたのかもしれませんが、ソシャゲによくある「歩いてカード集め」をそのまま持ってきたため、不思議な空気のゲームになっています。
ソシャゲは常時システムを変えられるので、これからまだまだ進化し続けるでしょう。実際初期から比べたら、尋常ではなく改良されてます。
最初期なんて、カードゲームなのに30枚しか保管できないし、デッキを自力で組むのすら不自由でした。これは致命的ですよ。
今はイベントも増え、システムも驚くほど改善されました。めきめき目に見えて良くなっています。

自分は高く評価したいところですが、逆に言えば「未完成のもの」を手渡されている感を受ける人もおそらくいるはず。
メインストーリー目当ての人は特に、現段階では明確な区切りまで物語が展開しておらず解放待ちなので、モヤっとするかもしれません。
一応、ちゃんと第一弾は完結しているそうです。
『拡散性ミリオンアーサー』プロデューサー岩野氏のロングインタビュー アップデート情報も - ファミ通App
システムアップデートは最近あらゆるゲームで増えましたが、ストーリーが解放されていない、というのはコンシューマでは、まずありえません。でもソシャゲだとほぼ前提のようなもの。
そう考えながら画集を見ると、複雑な気持ちになります。力は入っている、志もある。でもコンシューマ文法でソシャゲの方法を突っ込んじゃって、複雑なオブジェになっている。
そこが面白いんです。さてはてどうなるんだろう?

●「このカードがほしい!」「OK!」
このゲームのポイントの一つに、課金しなくてもちゃんと遊べる、というのがあります。
ソーシャルゲームは大体のものが、回復アイテムかガチャガチャが課金制。
回復アイテムは、お金かければ連戦できるチート機能みたいなもの。時間をお金で買ってる状態です。そのためお金をかければかけるほど強くなる、というオッカネー世界です。
ガチャは名前のとおり。だいたいはカード。アイテムや装備がガチャの場合もあります。課金をしたら強くなる、というのがほとんどのソシャゲ。

このゲームも初期は、かつて問題になったコンプガチャがありました。今はありません。
回復アイテムやガチャもあります。ここは他のソシャゲと全く変わりません。
しかし、それでも無課金でも頭使って努力すれば、かなり強いデッキを組めるんです。
なぜなら、回復アイテムやガチャチケットやレアカードを、無料でばんばん配るから。プレイしていて「えっ、そんな簡単に配りまくっていいの!?」とびっくり。お祭り感半端なし。
システムも、ストーリーも、キャラも、サービスもアッパー感が強いんです。

『電撃ゲームアプリ』Vol.5では岩野弘明プロデューサーがこう語っていました。
「無課金で遊んでいるとSRなんて夢のまた夢、というのはあまりにもつまらないじゃないですか。ですから、プレミアムガチャから出るSRの確率を上げてガチャチケでの入手の可能性をあげたり、妖精討伐にからめでSRの入手をできるようにしたりといった施策を現在行なっているところです。」

この言葉は体感できていて、特に覚醒妖精をボコボコにした時、いい確率でレアカード入手できるようになりました。がんばれば欲しいカードに手が届く。
ノーマルカードだから弱いというわけでもなく、限界突破してきっちり育てるとかなり強くなるものもあるよう調節され、ゲームの戦略性はかなり上がりました。
そこまで育てるのはめっちゃくちゃ大変ですが、ちまちまと育てられる、強くなれる、コンシューマ的部分です。

ただ、画集見ているとどうしても欲しいカードってあるわけです。
他のゲームだとトレード機能があってたいていのカードはそのうち手に入るんですが、このゲームはトレード無し。自力で手に入れるしかない。
そこでバランスをとっているんですが、ソシャゲとは言いつつも交流は一緒に敵を倒すことくらい。基本一人プレイで、このへんはコンシューマ的。リアルマネートレードなどの問題が発生しないのはいいんですが、友だちと作戦を練ったり交換したりなどはできません。

今までのソシャゲ文法で作られたゲームとは一線を画している、続きも企画されている長期プロジェクト。
スクエニはその後、ソシャゲ『ガーディアンクルス』などで改善して、凝ったゲーム性のある作品に仕上がっているだけに、今作はますます不思議な立ち位置です。
世界観面白いんだもの、これだけのスタッフが集まっていたらもっとすごいものになるはず!と期待をしたくなるゲーム。
メディア展開も含めて期待させてください。
ソシャゲのシステムと、コンシューマの文法の融合が成功に向かうのか、破滅に向かうのか。
それを自ら作中で示唆しているゲームであることが、ポップさなこの画集から見て取れる不思議な作品です。

とりあえず画集についてくる水着アーサーはかわいいです、ペロペロ。
(たまごまご)

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