テレビ東京では、27日木曜日深夜から最終回が放送されるテレビアニメ「戦国コレクション」。先週放送された25話「Marshal Princess」も、クライマックス直前とは思えない、非常に自由なストーリーでしたが、「これも戦国ぅ~」(CV:大久保瑠美)。

後藤圭二監督、脚本の雑破業さん、新井輝さん、金澤慎太郎さんによるスペシャル対談は、Part2でも引き続き、「戦コレ」の舞台裏に迫っていきます。
Part.1はこちら)

――新井さんと金澤さんは、戦国武将の扱いについて怒られたんですか?
金澤 最初に相当、怒られましたよね(笑)。
新井 怒られましたね~。
――どの戦国武将の話で怒られたんですか?
金澤 (5話の)塚原卜伝が一番大変だったんですよ。最初のシナリオは全ボツになったんで。
――え、丸っきり書き直しですか?
金澤 卜伝がニコニコしながら、人を殺すっていうのを書いたら、全ボツになりました。

新井 僕も4話の伊達政宗でかなり直したんですが、まさか戦国武将が人を殺しちゃいけないとは思わなかったんですよね。
――まあ、本物の戦国武将は、たくさん殺してたとは思いますけど……。
新井 (金澤さんと)2人で、ニコニコと人を殺してたら、「いや、人を殺しちゃダメでしょ」って怒られて。「え、ダメなの?」って。
――それは監督から?
後藤 いえ、プロデューサーサイドからですね。
――ちなみに、金澤さんが卜伝を書きたいと立候補されたのは……。

金澤 ゲームのイラストで刀を持ってたから、刀を使えると思って。あと、尻尾や羽もあるんですよ。あれはファッションなのか(KONAMIに)確認してもらったら、「体に付いてるもの」という回答が返ってきて。じゃあ、本物の悪魔だ。悪魔なら、人も切るだろうって思ったんです。
――なるほど(笑)。
では、ドキュメンタリー番組風の話になったのは?
金澤 ドキュメンタリーが好きなんですよ。ドキュメンタリーって、やばいネタについても扱うじゃないですか。
――たしかに、犯罪などの話も、ドキュメンタリーだから深く突っ込んで放送できてるという側面はありますね。
金澤 そうなんです。最初のボツになったシナリオから、同じ形でした。
――その他にも、特に印象に残っている回はありますか?
金澤 8話([太閤娘]豊臣秀吉の回)のシナリオは、第1稿で(会議を)通ったので驚きましたね。

新井 うん、驚いたね。
雑破 驚いた。
金澤 あれは、直されるつもりで書いたやつですから。
後藤 そうだったんですか?
――お米の大好きな秀吉が、不思議なお米の世界に行くという8話。非常にシュールな内容で、ファンの中でも、いろんな感想や解釈があります。皆さんが、最初にシナリオを読まれた時の感想も教えて下さい。

後藤 いや、単純に面白かったので、これで良いよねっていう感じで。まあ、「戦コレ」はオムニバス形式なんで、わけが分からない回があっても良いかなって(笑)。要は、秀吉がちゃんと可愛ければ、大丈夫だろうと。プロデューサーたちにも、そう説明をしました。
雑破 あの話はなんて言うかな……。会議でのセッションのしようがないというか。

新井 話し合いの余地がない感じはありましたよね。
雑破 そうだよね。
金澤 「ここは、ダメだろう」みたいな意見が出ると思ったんですよ。
新井 ツッコミを人任せにしたところはありましたね。そうしたら、誰も突っ込まなかった。
雑破 うん。基本的に「監督、どうでしょうか?」くらいしか聞かなかったよね。
金澤 最後に、(コンテ担当の)柴田(勝紀)さんだけが、「これ、どうしたら良いですか?」って聞いてくれて(笑)。「このシーンはこういう意味なんです」とか、全部説明しました。
雑破 その説明、僕らも聞いてたけど……。
新井 すごい根源的な話になってましたよね。
雑破 なぜ、本読み(シナリオ会議のこと)で、禅問答が行われてるんだ、みたいな。
――カカシが持っていた箱の中にいた謎の生き物たちの会話も、まさに禅問答のようで。何回も見たのですが、意味は分かりそうで分かりません。
金澤 あそこは、あるイギリスの詩からの引用を入れてたりするので。どの詩かは内緒ですが、それを読むと分かるかもしれません。
――気になりますね……。では、新井さんの印象的な回も教えてください。
新井 僕は、「戦コレ」で初めて脚本の仕事をしたので、最初に書いた4話が印象的ですね。そもそも、女囚ものをテレビでやるのが、許されるとは思ってなかったんですけど。
雑破 どうして、テレビで女囚ものをやろうと思ったの?
新井 なんか、普通のアニメはやりたくないみたいな空気を感じたので。
雑破 あ、なるほど。
新井 テレビでやらなさそうなものを……と思って。最近、あまり見かけないけど、女囚ものとか面白いかなって。それで、最初に案を出したら、プロデューサーが「それは女囚さそり、みたいなものですか!」って、すごい食いついてくれて。実は、他の女囚ものをイメージしてたのですが、じゃあ「さそり風」にしようと思って仕上げたら、「これは、さすがにテレビに流せないでしょう」って言われました(笑)。
――再現度が高すぎたんですね。
新井 すごく、女囚ものっぽくしたのに、「人を殺すのは常識的に考えてダメでしょう」って。このタイミングで、(金澤さんと)2人まとめて、怒られたんですよ。
――「この4話と5話、なにやってんの!」みたいな?
金澤 そうそう。
新井 「常識的に考えて下さい」って言われて。この作品なら、特別に許されるのかなと思ったんですけど。やっぱりダメかと思って直してきたら、今度は監督から「どうして直しちゃったんですか?」って(笑)。
後藤 そうでしたっけ?
新井 でも、考えてみたら監督からは怒られてなかった。監督は「良いんじゃないですか」って言ってくれてたんですよ。
後藤 殺してたとしても、画面上では殺してないように見せる逃げ道なんて、いくらでもあるので。それは5話にも当てはまるんですけど。プロデューサーたちにも「いくらでも方法はありますよ」とは説明したんですけど。まあ、さすがに通らなかったですね。
新井 それで、残酷描写ではなく、時代劇みたいなカッコ良い殺し方。直接は描かれないけど、刀で切られて倒れたのだから、死んだのだろう、みたいな形であれば大丈夫ということになって。そこで生まれたのが「スタイリッシュ」っていう言葉なんですね。
――ああ、ラストに突然繰り出された、政宗の謎の必殺技「スタイリッシュ成敗」は、そうやって生まれたんですね!
雑破 いや、僕はそのときの会話を覚えてるけど。確かに、新井さんが「スタイリッシュにやれば良いんですよね?」って言ったから、「まあ、そうだよね」とは答えたんだけど。そのまま、そう書けってことじゃないから(笑)。
新井 その話をした時点で、政宗は「成敗!」って言ってたんですよ。でも、このままだと死んでるな、と。成敗したら、普通死ぬじゃないですか。
――まあ、そういうイメージの言葉ですよね。
新井 殺したら、怒られるよなって思ったので。じゃあって。
雑破 あくまでスタイルだけっていうね。
新井 スタイリッシュにすれば許されるんだ、と思って。とりあえず、ダメ元で書いたら、通っちゃったんです。
――個人的に気になっていた「スタイリッシュ成敗」誕生の秘密が聞けて大満足です。
新井 まあ、難しい事を考えて書いたのではなくて。ちょっと最後が物足りない感じがあったので、一発かまそうと思っただけなんですけどね。
――4話の他に印象的なエピソードはありますか?
新井 あとは、12話ですかね。
――[舞桜]前田慶次がバイクに乗って、不良を懲らしめていく話ですね。
新井 あの回、話的には無茶苦茶なんですよ。
雑破 あ、それは、俺、一言言いたい。
――なんでしょう?
雑破 12話は、最後の3分があれなら、その前はどんな話が来たって一緒じゃん(笑)。
――確かに、前田慶次の行動の理由が明かされたシーンは衝撃的でした。
雑破 面白いけどね(笑)。
金澤 うん、面白いですけど。
新井 あの回も本当に自由に書いていて。プロットに分解したら、明らかにおかしい。あまり行儀の良い脚本じゃないんです。でも、映像になってみたら、良い話として、収まっているように見えるんですよね。あれは、演出の方の力でしょうか? アニメって、すごいなと思いました。
――では、監督が、シナリオを読んだとき、特にインパクトを感じた回は?
後藤 今までの話で、だいぶ出ちゃいましたね。4、5、8話とか……。あまりアニメっぽくないものをやりたいというのは、僕が言ってたことなんですね。それで、4話と5話の第1稿が上がってきたときは「キター!」って(笑)。とりあえず、見る人がどう思うかとかは抜きにして、これで行くべきだって、ちょっと思ったんですけどね。
――そんなことは、無理だったと。
新井 たしか、信玄の回は、監督から宇宙の話でというリクエストがありましたよね。
後藤 そうですね。
新井 最初の頃から、宇宙の話はどこかでやりたいと言ってて。このままだとやるところがない。それで、信玄の話もそんな感じだったので、21話でまとめてやっちゃうかって。
――そんな裏事情が。19話と20話で、[小悪魔王]織田信長と、[復讐ノ牙]明智光秀の関係が描かれて。ついにクライマックス突入かと思ったら、次の回は信玄が主役の宇宙ステーション回。これも「戦コレ」らしいなと思いました。
雑破 フサード29(信玄をサポートするロボット)のデザインは、誰が考えたんですか?
後藤 あれは、キャラクターデザインの柴田君ですね。
――形は、完全に電気ポットですよね。
後藤 (制作スタジオの)ブレインズ・ベースの台所にあるポットの形、そのまんまです。柴田君が、シナリオを読んで描いてきたのですが、「これなに?」って聞いたら、「ポットです」と。「ああ、そこにあるポットか~」って。少し悩んだんですが、まあ、あまり深く考えず、良いかなって。
新井 僕も(フサードの形が)ポットだと思って書いてはなかった。フサードがお茶を入れるシーンは、たぶんコンテで追加されたんですよね?
後藤 そうですね。コンテの川越(淳)さんです。
――では、脚本家の皆さんに伺いたいのですが。自分が脚本を書いた回以外で、特に印象的なエピソードはありますか?
金澤 う~ん。
新井 もう、だいぶ出ちゃいましたよね。雑破さん、あります?
雑破 まあ、23話かな。
――[お砂場]尼子経久がメインのエピソードですね。
雑破 あれは、ずるいよね。ああいうことはやっちゃいかんよ(笑)。
金澤 ははは(笑)。
(丸本大輔)

Part.3(最終回)に続く