「では、新しい管理人さんとの出会いを祝って、かんぱーい!!」(『めぞん一刻』第1集Part.1より)

まさにこの台詞がピッタリ! 新しい管理人さん、本日(10月17日)堂々の新発売です。
東京・時計坂にある古アパート「一刻館」に住む五代裕作と、管理人としてやって来た未亡人・音無響子のラブストーリー……とは、ここで改めて説明するまでもなく、みなさんご存知の『めぞん一刻』
連載終了から四半世紀!が過ぎようとしても色あせない人気作が、今度は「日本酒」として帰ってきたのです。

これは、新潟県出身である『めぞん一刻』の作者・高橋留美子と、同県のふじの井酒造によるコラボレーション商品「大吟醸 めぞん一刻 白無垢」(5250円※ネット通販のみ)。予約受付は先週から始まっていたのですが、発売&発送開始は本日から。

10月13日・14日には、新潟県のアンテナショップ「表参道・新潟館ネスパス」で試飲会が開催。豪華なパッケージに負けず劣らず、地元新潟県産の山田錦を贅沢に40%磨いてつくったこだわりの逸品は新潟のお酒らしいまろやかな口当たりが特徴的。鶴をあしらったラベルは贈り物にも最適です。

実はこのふじの井酒造、2007年から高橋留美子作品との様々なコラボ商品を世に出しているのですが、今回は日本酒の芸術品ともいえる「大吟醸」が響子さんの白無垢姿をまとって登場! ということで、いやがおうにも注目度は高まります。

そこで、この「めぞん一刻大吟醸 白無垢」の発売を記念して、『めぞん一刻』においてもまさにキーアイテムともいえる「お酒」に焦点を当てて「ほろ酔いエピソード」を7つピックアップ。お酒との関係性の深さから改めて『めぞん一刻』を振り返ってみたいと思います。


■「隣はなにを…!?」(第1集Part.1、ワイド版・文庫版は第1集Part.1)

記念すべき第1話から、さっそくどんちゃん騒ぎの酒盛り場面が登場。新管理人として赴任してきた響子さんの歓迎会が、五代くんの5号室で繰り広げられるのです。
日の丸扇子を振りかざして踊り酔う1号室・一の瀬花枝、壁を壊してのぞきを繰り返す4号室・四谷さん、ネグリジェ姿でちょっかいを出してくる6号室・六本木朱美。
そんな面々におもちゃにされる浪人生・五代裕作&惣一郎(犬)に愚痴をこぼす音無響子……と、恐るべきことに第1話にして、その後7年間に渡るドラマの基本構図が出来がっているのです。さすがのるーみっくわーるど、恐るべし!


■「アルコール・ラブコール」(第1集Part.9、ワイド版・文庫版は第1集Part.9)

五代くん一世一代の管理人さんへの初告白エピソードにも、お酒が必須アイテムです。
無事大学に合格し、コンパに明け暮れる五代くん。人生ではじめてと言えるほど酔っぱらった勢いを借りて、一刻館の玄関口で管理人さんに告白を果たします。
『めぞん一刻』初の1ページぶち抜きカットによる五代くんの告白シーンと「響子さ~ん好きじゃあああ」の熱い台詞はぜひ直接確かめていただくとして、五代くんの思いに揺れつつ、惣一郎さん(人間)への操をたてながら、すれ違い、勘違いを繰り返していく『めぞん一刻』の恋愛物語がまさにここから始まっていく、ぜひとも押さえておきたい名場面です。


■「キッスのある情景」(第5集Part.4、ワイド版・文庫版は第3集Part.14)

五代くんと響子さんの初のキスシーンも、きっかけにはお酒が絡んできます。

失恋し、泥酔して帰ってきた朱美さんから強烈なキスをされた五代くんと響子さん。そこからお互い、寝ても覚めても「クチビル」ばかりに意識を向けてしまいます。それぞれ、こずえちゃん、三鷹さんとのキスに進展しそうになりながらも未遂に終わり、一刻館の玄関口で遭遇する2人。「クチビル」のアップ描写だけでみせる終盤の1ページは、読者の目線も意識も釘付けにすること間違いナシです。


■「一刻館の昼と夜」(第5集Part.8、ワイド版・文庫版は第4集Part.3)

響子さんの制服姿が拝めるのがこのエピソード。いつもの宴会がひょんなことから仮装大会になり、響子・一の瀬・五代は学生服に、朱美さんはナース姿、そして四谷さんは虚無僧姿に扮して、やっぱりただただ5号室で呑む、というだけのエピソード。

恋愛も人生もなにも進展しませんが、こういう事件もない、酒を呑むだけの一刻館の日常も、また素敵なんですよね~。


■「梅酒婆あ」(第6集Part.6、ワイド版・文庫版は第4集Part.11)

5号室に長期滞在していた五代くんの祖母・ゆかりばあちゃんお手製の梅酒が登場するこの回では、遂に惣一郎(犬)までも宴会に加わります。結局、酔っぱらった五代くんと惣一郎が響子さんをめぐって喧嘩する、というオチに辿り着くのですが、ここで注目したいのが夏の季語・梅酒。現実世界と同じ時間軸で物語が進展していく『めぞん一刻』においては、この「梅酒」のように季節感を感じさせる食べ物やアイテムが随所に登場します。その歳時記としての魅力に、「リアルタイムで読みたかったなぁ」と何度思ったことか。
中学生ではじめてこのエピソードを読んで以来、夏の梅酒に憧れた私。
今では自分でもゆかりばあちゃんよろしく、毎年梅酒を漬けております。


■「がんばってくださいね」(第7集Part.10、ワイド版・文庫版は第5集Part.10)

骨折で出席日数が足りなくなり、期末試験をひとつでも落とせば留年、という状況に追い込まれた五代くん。骨折の原因が自分にあるため責任を感じた響子さんは、住民にテスト期間中の5号室での宴会を禁止し、五代くんのために毎晩夜食を用意するなど献身的なサポートをみせます。
ところが、最終試験日の前夜、一の瀬・四谷・朱美の誘いに応じて深酒をしてしまった管理人さんは、五代くんを起こす約束をしておきながら自ら寝坊。試験に間に合わなかった五代くんの運命やいかに……!?

第1話から登場し、音無響子の代名詞ともいえる「がんばってくださいね」のタイトルを冠したこのエピソードは、響子さんの涙あり、怒りありとまさに音無響子の魅力満載。
また、扉ページの「合格祈願・響子さんお守り」は切り取ってお守りに使えるという、たいへんありがたい企画になっているので、受験生や試験に励む方にオススメします。



■「今夜 待ってる」(第15集Part.4、ワイド版・文庫版は第10集Part.10)

やっとのことで就職した会社が入社前に倒産! 大学卒業後もいばらの道を歩み続けた五代くんも、1年半の勉強末に見事保父試験に合格。響子さんとも遂に結ばれ、いよいよプロポーズを決意します。
が、五代くんの試験合格を祝って1週間徹夜の宴会が続く一刻館。盟友・坂本との飲み会をはさんで第二次合格宴会が3日間と、なかなか2人きりになってプロポーズできる状況がつくれません。
響子「宴会くらい断ればいいじゃないですか!」
五代「断れるもんなら浪人時代に断ってますっ。」
という一連のやり取りでみせる響子さんは、これぞツンデレの元祖! を証明してくれるでしょう。


以上、「7つのほろ酔いエピソード」を選んでみましたが、正直、7つじゃ足りません。だって、5号室で、玄関先で、物干し台で、廊下で……といつも誰かがどこかで呑んでいるのが一刻館なのだから。
『めぞん一刻』の連載期間は1980年~87年。高度経済成長が終わり(1970年代後半)、バブル経済突入(1986年)前の「円高不況」の暗い世相を払拭する上で、お酒の力が必要だったのかもしれません。そして、これだけ「お酒」が欠かせない『めぞん一刻』に目をつけたふじの井酒造は見事の一言です。

ふじの井酒造は新潟の素材にこだわって酒造りを続ける明治19年創業の老舗。小林政輝代表に取材したところ、次のように語ります。

「若い人にも日本酒を楽しんで欲しいと、新潟出身の高橋先生とのコラボ商品を企画しました。私たちは小さな蔵元ですが、中身にはこだわっています。特にこのコラボ商品では、外観だけと思われたくないので、既存の商品にラベルを張り替えるようなことはせず、通常よりもワンランク上のブレンドでつくっています。今回の大吟醸は新潟県産の山田錦を、他の商品もすべて新潟のお米(五百石)を使い、新潟の酒造りにこだわった、新潟の酒ならではの淡麗辛口・後味スッキリの味わいを楽しんでいただければと思います」

実際、ふじの井酒造はこれまでにも、「うる星やつら ラムちゃんのラム&チョコ(リキュール)」「らんま1/2カップ」(量は1/2じゃないです)、「めぞん一刻 本醸造」「うる星やつら 特別本醸造」などなど、数々のコラボ商品を生み出してきています。今回も「大吟醸 めぞん一刻 白無垢」だけじゃなく「ラムちゃんオリジナル前掛け」「ラムちゃんのリキュール(ラム&チョコ)と香りを愉しむグラスのセット」が同時に新発売され、高橋留美子ファンにはたまらないラインナップです。

「今後も新商品をどんどん出していきたい」と語ってくれた小林代表。ということで次はぜひ、「五代ばあちゃんの梅酒」をお願いします!
(オグマナオト)