2007年1月~3月に放送されたテレビアニメ「ひだまりスケッチ」。やまぶき高校に通う女の子たちの日常を描いた、まったり癒し系の作品ですが、「ひだまら~」と呼ばれる熱いファンたちに支えられてシリーズ化。
10月からは、第4期の「ひだまりスケッチ×ハニカム」が放送中で、12月26日にはBlu-rayDVDの1巻も発売されます。さらに、2013年の3月3日には、イベント「超ひだまつり第4弾」を日本武道館で開催することに!
主人公のゆのを演じる人気声優の阿澄佳奈さんと、数々のイベントの仕掛け人である宣伝担当プロデューサー高橋祐馬さん(愛称はゆまさん)の対談後編は、懐かしい1期の頃の思い出から、武道館イベントの内容まで、語っていただきます。
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――次は、1期の頃のゆまさんについて、阿澄さんの率直な印象を教えてください。
阿澄 私としては、作品に宣伝担当の方がいるってことすら、よく知らないような状態だったので。「あ、お世話になる方なんだな」みたいな。
ゆま 大人たちの一人みたいな?
阿澄 はい。
初めて作品を担当するって仰っていたのも覚えているんですが、初めてにしては、けっこう、なんだろうな……。
ゆま 言葉を選ばなくても大丈夫ですから。ぜひ本音を(笑)。
阿澄 えっと……(笑)。キャスト側としては、ありがたいくらいに楽観的というか。良い意味の軽い感じで、こんな楽しいこともできるんだって風に、うまく乗せてもらえた気がします。
まあ、その頃は、何が普通かとか全然知らない状態だったので。後から考えてみたら、すごいことにチャレンジしてたんだってことも、たくさんあるんですけど(笑)。そういうことを仕掛けられる方が、この作品の宣伝担当だったっていうのも、今の「ひだまり」になった、本当に大きな要因の一つだと思ってます。
ゆま ありがとうございます。
――チャレンジというのは、イベントなど?
阿澄 はい。あと、ラジオもそうですよね。
(共演者に)有名なキャストさんがたくさんいる中で、全然無名の私を一人でパーソナリティに据えるのも、チャレンジじゃないですか?
ゆま たしかに!(笑)。でも、この「ひだまりラジオ」の面白さは、私というよりは、構成作家、兼ディレクターの長田宏さんと阿澄さんの出会いが運命的だったのだと思います。長田さんへお願いすることになったのは、ランティスさんの引き合わせなのですが、お二人の出会いによって、まさかこんな面白いラジオになるとは。そのことに運命を感じます。
――では、今度はイベントについて聞かせて下さい。これまでも数多くのイベントが開催されてきましたが、特に印象的なできごとは?
阿澄 難しいですけど、やっぱり2期制作決定の発表をしたときのことは印象深いです。
あれはBLITZですよね?
ゆま 横浜BLITZです、2007年11月18日。
――日付けまで覚えているんですね!
阿澄 発表をしたとき、「ひだまら~」のみんなが喜んでくれる、そのパワーに圧倒されました。想像をはるかに上回る、爆風みたいな感動に巻き込まれた感じで。嬉しくて、ずっと「うぇ~~~」って泣いてましたね(笑)。
ゆま めっちゃ泣かれてましたね(笑)。僕も本当にいろいろ思い出はあるんですけど、あえて一つということであれば、3期を放送中の2010年の2月にパシフィコ横浜で開催したイベントですね。
あのとき、1期のOPの「スケッチスイッチ」を、お客さんも一緒になって何回も何回も繰り返して歌う「スケッチスイッチ×☆☆☆」っていうのをやったんですが、その瞬間をやけに覚えていて。あの時に、ものづくりの本質を垣間見た気がしたんです。究極的には、関わる全ての人には一切の差なんてなくて。楽しむ人がいて、作る人がいて、演じる人がいて、全部を含めて、作品だったりイベントだったりする。そういうことなんだなと思わされる景色を、目の当たりにした気がしました。
――会場が一つになってましたよね。
次のイベントを行う日本武道館は、収容人員がパシフィコ横浜の2倍、約1万人なわけですが。阿澄さんは、武道館でイベントをやると聞いたとき、どんな気持ちに?
阿澄 正式に決まる前に、「大きいところでやりたいと思ってるんです。武道館とか」みたいに話は聞いてたんですよ。でも、そのときは「いやいや、決まらないでしょ」って感じで、その話を信じようとは思わなくて。不思議と、聞き流す感覚が働いてましたね。
――信じたくなくて、心が自然防衛していたんでしょうか(笑)。
阿澄 そうかも(笑)。でも、もう発表しちゃいましたからね。あはは。
ゆま もう、後には戻れないですよ~。
阿澄 でも、この機会に良いかなとも思っていて。(武道館なら)きっと来たい方がみんな来られるってことだろうし。
ゆま 阿澄さんは、初武道館ですか?
阿澄 立つのは、初です。まさか、武道館のステージに立つ日が来るとは全然思いませんでしたけど。それが「ひだまり」で、本当に感慨深いですね。
――ゆまさんが、武道館でやりたいと思ったのは、なぜですか?
ゆま 実は、裏では1年以上前から動いてたんですよ。
阿澄 ふ~ん(笑)
ゆま ファンの方とリアルで触れ合える場って大事だと思うし、だからこそ、イベントが好きなんですけど。今回やるなら(大きな)武道館か横浜アリーナと思っていて。でも、ああいう大きな場所を使わせて頂くのって想像以上に難しいことなんです。簡単には押さえられないものなので、1年以上前からご相談しても、その時点で3番手のキャンセル待ち。それが数ヶ月続いたのですが、ある日、先に押さえていた某有名アーティストさん2組が立て続けにキャンセルして、3番手だったウチが使えることになったんです。しかも、3月3日のひな祭りに。イベントの神様がもしいるのなら、「ひだまり」は本当に愛されている作品だと思います。
――ひな祭りの日に「ひだまつり」ですから。
阿澄 神の力が働いてますよね(笑)。実際にイベントでも、毎回、ドラマが生まれるんですよ。台本とか構成もすごく練られているんですけど。それ以上の、これは人が考えて生まれるものじゃないよな、ってことが起きるんです。
ゆま 本当に。正式に決まったのは、つい最近なんですけど、最高のものにするべく、自分にできることを精一杯やりたいと思います。
――では、どんなイベントになるのか、言える範囲で……。
ゆま まったく、決まってません!(笑)。
――そうなんですか?
阿澄 さっき、「何やりたいですか?」って聞かれましたもん(笑)。
――阿澄さんは、初の武道館でやりたいことはありますか?
阿澄 武道館って、何ができるんですかね?
ゆま なんでも、やりたい放題ですよ。
阿澄 じゃあ、この際なので、できることは何でもやりたいですね!
ゆま やりましょう! 具体的なことは何も決まってないですけど、一切ブレーキを踏まずに、最強のエンターテインメントショーにしたいと思ってます。あ、そうだ。今回、取り入れたい要素が1個あるんですよ。まだ内緒ですけど、まったく新しい要素を「ひだまつり」に取り入れようとしています。
――どんな要素か楽しみです。ノーブレーキということは、今回も証拠映像は残さない方針ですか?
ゆま もちろん。DVD化も、配信も、ライブビューイングも一切なし! 一秒たりとも世に出しません(笑)。
阿澄 それは、すごくありがたいです。やっぱりイベントでは、その場のノリや流れとか、ライブならではのことを大事にしたいと思っちゃうところもあって。だからこそ、武道館に来て、その場で体験してもらいたいなと思います。
ゆま まぁ、というか色々と権利的に出せる内容じゃないっていうのもあるんですけどね(笑)。多分、イベントレポートさえも無いかも。
――え~。じゃあ、僕も抽選でチケットを当てないと……。
阿澄 今回は、きっとみんなが来れると思いますよ。
ゆま ええ、武道館って、わりと広いんで(笑)。
阿澄 なので、みなさん、スケジュールの都合さえつけていただければ。そこだけはぜひ頑張ってください。よろしくお願いします!
――分かりました! 最後に「ひだまら~」の皆さん、そして、まだ「ひだまりスケッチ」をあまり知らない方々にも、メッセージを頂けますか?
ゆま 1期、2期、3期、特別編、それぞれを支えて下さった方がいるからこその4期、本当にありがとうございます。この幸せな日々を、皆さんにもかみしめてもらえたら嬉しいです。また、4期から見て下さった方もいると思うのですが、前に遡って見ていただいても、変わらぬ楽しさが詰まってますので、ぜひお願いします。来年のイベントに関しては、けっこうな赤字になりそうで、どうしようみたいな感じですが……。
阿澄 ど、どうしましょう? な、なんか売りましょう!(笑)
ゆま 良いですね! というのは、半分冗談で半分本気ですけど(笑)。ここまでの物語を積み重ねてきたからこその武道館という幸せな場。主役は、登壇する役者さんと見に来てくれるお客さんですので、僕は、そのお役に立てればと思ってます。一切形に残さないことを約束しますので、ぜひ武道館に来て下さい。そして、まだ「ひだまり」を知らない方は、深夜にとっても気持ち良く寝られるアニメを放送してますので、このストレス社会の中、お休み前に見ていただけたら嬉しいです。
――ありがとうございます。では、阿澄さん、お願いします。
阿澄 「ひだまりスケッチ」という作品に出会えてなかったら、今の「声優・阿澄佳奈」は絶対に生まれてなかったくらい、本当に大きな出会いでした。だからこそ、この日々が幸せで大切でってことを思い知らされているというか。本当に感謝の気持ちいっぱいで、毎話アフレコに行かせていただいてます。何も知らなかった私を現場で支えてくれたキャストさん。スタッフさん。愛して下さるファンの皆さま。そして、この作品をゼロから作り上げた「神」、蒼樹うめ先生。いろんな方々に感謝の一言に尽きますね。武道館という場所は、その感謝の気持ちを全部ぶつける場としては、ベストの場所だと思うので。そこに向けても、主役として、精一杯頑張っていきたいと思います。
ゆま 良いですね~。
阿澄 規模が大きすぎて、どれだけ緊張するかも分からないんですが。私たちなら大丈夫って気もしています。あと、新しいカメラを買ったので、記念にたくさん写真を撮りたいですね(笑)。そして、「ひだまり」を見たことない人にですよね……。でも、「ひだまりスケッチ」という作品にちょっとでも興味を持って下さった方は、みんな「ひだまら~」だと私は認定してしまうので。もう、その肩書きはついちゃってますから(笑)。オンエアでも、DVDやBlu-rayでも、ラジオでも、原作でも、たくさんの入口があるので、ぜひ一度触れてみていただきたいです。そうしたら、もうこっちの勝ちなので!
――なるほど(笑)。
阿澄 それくらい自信を持ってお届けできる、愛の詰まった作品ですので、ぜひぜひ。気軽に足を踏み込んでみてください。
――ありがとうございます! すごく気は早いですが、「ひだまら~」としては、5期の実現も期待してます。
ゆま もしあったらとっても素敵ですね。でも、「ひだまり」って、先を見据える計画性とか商売っ気とか、一切考えず、その場その場を全力で走ってきて、気がついたら道ができてたみたいな作品なんです。だから、もしかしたらそういう未来もあるのかもしれないですけど、あえて意識はせず、4期の残りも、武道館も、その瞬間の最大値を目指したいと思います。もし次があったら、また、そのときに。
――新しいアイデアを?
ゆま ええ。次は東京ドームかな(笑)。
阿澄 私も、いつも次はないって気持ちで臨んでいるんです。あったら良いななんて思っちゃうと、無かったときが怖くて。たぶん私は、その失望感に耐えられず押しつぶされてしまうから(笑)。だからこそ、今、全部をぶつけるんだって気持ちでやらせていただいてます。きっと武道館もそう。私の中では、「ひだまり」の集大成的なものになるんじゃないかなと思います。
――では、「ひだまら~」や、阿澄さんのファンは行くしかないですね。
阿澄 ホント、絶対に来てもらわないと困るんで!(笑)。ぜひぜひ、ご都合を合わせて来て下さい。
(丸本大輔)