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山田うどんにサブカルチャーの真髄を見た『愛の山田うどん』

夜遅くまで開いているなど営業時間が長く、安価なダイナーは外食の機会を広範な層に向けて提供するものだ。それがアメリカの食習慣を変え、文化を規定するものになった。ポップアートの旗手エドワード・ホッパーにダイナーを題材とした作品が多いのは、そのためだろう。ダイナーのある光景は、誰にでも機会が平等に与えられるアメリカ社会の象徴なのだ。しかし平等で均質であるということは、自らが特異点となる機会を逸するということでもある。だからダイナーを背景として描かれた人物は常に非個性的で孤独に見える。
モータリゼーションと大量消費を前提として出現した20世紀アメリカの象徴、ダイナー。その日本版が実は山田うどんの巨大看板だったとは!

ーーそれは日本のロードサイドにエドワード・ホッパーが持ち込まれた最初の瞬間だったのではないか。僕は異形のもののように突然、所沢で輝き、廻りだした山田のかかしにしびれる。UFOなのか。UFOじゃないよ、山田だよ。こわくないんだよ、うどんだよ。山田うどんだよ。

そういえば映画「未知との遭遇」の日本公開は1978年のことだった(「スターウォーズ」も同年)。少年たちが映画館で息を殺して巨大宇宙船を見つめていたとき、すでに山田うどんの看板は、静かに埼玉は所沢で廻り始めていたのだ。少年期にそれを見た中には、山田うどんの五文字が原風景に擦りこまれた者もいるだろう。自分がいかに/いつ山田うどんと出会ったか(『未知との遭遇』風に言うと、第一種から第三種の接近遭遇をいつ果たしたか)は、関東圏のある地域に住む者にとっては自身の「地元」観を検証するための尺度になるのである。山田うどんは関東限定のチェーンだが、おそらく同じような風景の中の標識が各地方に存在するだろう。東海地方における「スガキヤ」や北陸地方の「8番ラーメン」などは、そうした「原風景の食堂」なのではないかと私は考える。

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2012年12月11日のレビュー記事

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