2012年の4月から放送されたTVアニメ「戦国コレクション」。放送開始前はダークホース的存在だったものの、スタート後はオムニバス形式のバラエティに富んだ構成や、自由奔放なストーリーなどが話題に。
「エキレビ!」で掲載した、後藤圭二監督と脚本家陣の対談にも大きな反響がありました。
そして、この度、ファンの根強い人気に推されて全26話の配信が決定! GyaO!では1月21日(月)から1月27日(日)に全話一挙配信。ニコニコ生放送では21日(月)から25日(金)の5日間に5話ずつ(最終日のみ6話分)配信されます。(詳細は「戦コレ」ポータルサイトを参照)
そこで、この機会に、再び「戦コレ」スタッフへのインタビューを企画。今回は、原作のソーシャルコンテンツを開発しているKONAMIを訪れて、アシスタントディレクターの内藤晶子さんにお話を伺ってきました。アニメでも、アシスタントプロデューサーとして初期段階から制作にかかわってきたという内藤さん。
原作サイドから見た、アニメ「戦コレ」について、じっくりと話していただきました。アニメ「戦コレ」に関して、原作ゲームのメインスタッフがインタビューを受けるのは初めてのことだとか!
原作ありのアニメながら、こんなにも自由な作品となった秘密に迫ります。

――内藤さんは、原作のゲームには、どのような形でかかわられているのですか?
内藤 立ち上げのときからメンバーとして携わっています。元々はデザイナーだったので、実はゲームに出てくる三巫女のイラストは私が描いたものなんですよ。
――え、そうなんですか?
内藤 はい。主にキャラクター制作に携わっています。
キャラクターの原案を考え、それに沿ってイラストレーターさんに制作をお願いし、[小悪魔王]のような冠名とキャラ説明文をつける、といったような事ですね。
――「戦国」というタイトルですが、ゲームには、幕末や中国の三国志のキャラクター、ベートーヴェンなど世界の偉人も登場しますね。
内藤 正統派な歴史物が得意なメーカーさんは、他にいらっしゃるので。我々のチームでは、我々しか作れないものを作ろうという方針は最初からありました。なので、既存のイメージにとらわれ過ぎないキャラメイクを心掛けています。説明文も、教科書のような固い文章じゃない方が楽しんでもらえるのかな、と。

――たしかに、ユニークなものが多いですね。内藤さんは、アニメ制作の過程でも、初期から本読み(シナリオ打ち合わせ)に参加されていたそうですが。
内藤 はい。アニメの中でキャラクターをどう描いていくのかという部分で、原作サイドとしての判断などをさせていただくために参加していました。
――原作ゲームは、アニメ化の前からすでに人気コンテンツでしたが。アニメ化には、どのような狙いが?
内藤 ゲーム内でもそれぞれのキャラは立っているのですが。
メインとなるストーリーがないので、アニメという媒体を通して、さらにキャラクターに深みを出して頂ければ、ということでお願いしました。
――以前の対談によると、アニメ化に関して、KONAMIさんからの具体的なリクエストは、ほとんどなかったそうですが。
内藤 そうですね。キャラクターを魅力的に見せて下さいということと。ゲームの中の人気投票で一番人気だった[小悪魔王]織田信長をメインの立ち位置で、ということはお願いしました。
――アニメ化にあたって、まずは「戦国武将が現代にやってくる」、「各話ごとにメインキャラが変わるオムニバス形式」といった作品の骨格が固まっていったと思うのですが。
内藤さんの中では、アニメ「戦コレ」の具体的なイメージは見えていましたか?
内藤 徐々にシナリオが出来上がってきた段階で、なんとなく「こんなアニメになるんだな」というのが見えてきた感じでしたね。アニメには関わるのも初めての素人なので。最初は手探りで、どこまでお願いして良いのか、どのくらい要望を出して良いのか悩みました。でも、後藤監督をはじめ、皆さんアニメ制作のプロの方々なので。私たち(KONAMI側)が固定観念のようなものを持って何かを言うのではなく、皆さんにお任せした方が良い作品になるのでは、と思っていました。
――先日、脚本を担当された新井輝さんに少しお話を伺う機会がありまして。
KONAMIの方は「どんな無茶なアイデアも基本採用する方向で考えてもらえてすごくありがたかったです」と仰っていました。
内藤 皆さんからご提案いただいた色々なアイデアは、無茶というより、どれも面白かったので。それに、キャラクターを貶したり、ないがしろにしたりするようなことではなく。大事に育てていこうとしてくれてる感じが、すごく見えたんです。だから、「ウチの子を任せても大丈夫かな」みたいな感じはありました。
――では、本読みのとき、印象に残ったエピソードなどはありますか?
内藤 監督と脚本家さんの対談でも出ていたお話ですが。4話と5話のシナリオを最初に読んだときは、やっぱり、ちょっとびっくりしましたね。
――ボツになってしまったという、伊達政宗回と塚原卜伝回の幻の初期案ですね(笑)。
内藤 そのときは、「わあ……。このアニメ、どうなるんだろう」とも思ったのですが(笑)。徐々に上手く転がっていき。(5人の脚本家の)皆さんの作品が出そろった6話くらいまで来たときには、これはお任せして大丈夫だなと、安心できました。それ以降は、自分としても、どういう形で脚本や本読みに向き合えば良いのか、つかめた感じです。
――では、キャラクターの膨らませ方などに関して、特に面白いと思ったことを教えて下さい。
内藤 本当にいろんな方向にキャラ付けしていただいて、どれも面白かったんですけど。本読みのときに印象的だったのは(7話の)松尾芭蕉でしょうか。「五・七・五」でしゃべるという設定になったとき、どうなるのかなと思ったんですけど。シナリオになったら、すごく可愛らしくて。リズム感もあるし面白いなと。さらに、声優さん(CVは西明日香が担当)に声を当てていただいたら、ますます可愛くなっていて。なんの心配もすることなかったんだ、余計なことを言って止めたりしなくて良かった、と思いました。
――そういったアニメオリジナルの設定にOKやNGを出すのも、内藤さんの役割ということですね。
内藤 あとは、それぞれのキャラクターについて質問を受けて、お答えするという役割もありました。「どんな口調ですか?」とか。「どんな性格ですか?」とか。「この子は、こういうことをしても許されるキャラですか?」とか。原作サイドとしても、大まかなキャラ付けはあったのですが、(ゲームを遊んでいる)お客さまはどう思っているのかも考えながら判断していくのは、けっこう大変な作業でした。
――特に判断に悩んだ質問はありましたか?
内藤 印象的だったのは、最上義光ちゃんが主人公の回(15話)で、新井さんの担当だったんですけど。「おねしょをしても良いですか?」って聞かれて。
――すごい問い合わせが来ましたね(笑)。
内藤 真剣に悩んでから「だ、大丈夫だと思います」って答えました(笑)。
――義光、おねしょをして、伊達政宗にからかわれてましたね。
内藤 あとは、12話で「前田慶次が、助けた先生といい仲になってても良いですか?」と。これも新井さんに聞かれて。
――「いい仲」ですか(笑)。
内藤 それも真剣に考えて。「いい仲になるより、クールに突き放す方が前田慶次らしくて、カッコイイと思います」って答えたら、(いい仲の)シーンの代わりに、先生のお誘いをカッコ良く断るというシーンになってました。
――あのシーンは、そういうやり取りから生まれたんですね。ところで、まもなくGyaO!とニコニコ生放送の全話配信もありますが、内藤さんの特にお気に入りのエピソードを教えて下さい。
内藤 私は、19話の(明智)光秀の探偵の話がすごく好きなんです。史実も交えつつ、信長とか中心キャラクターも総登場して。しかも1話のアバンにもつながるような作品になっていて……。
――ネタと本筋のストーリーの絡め方が巧みで、密度の濃い回ですよね。
内藤 そうなんですよね。さすが雑破(業)さんだな、と。
――僕が特に強いインパクトを受けたエピソードについても伺いたいのですが。豊臣秀吉が不思議なお米の国に迷い込む8話については、本読みの段階で、どんな印象を? すごくシュールな回だと思うのですが。
内藤 元々、あの世界観に迷い込むのは秀吉ではなく、尼子経久だったんですね。なので、(秀吉よりも幼い)経久が不思議な世界に行くのはイメージとしてあり得るかなと思っていたんですけど。それが二転三転して秀吉になって。最初、この秀吉が、あの世界観の中で生き残れるのかな、とは少し思いました(笑)。でも、お話として面白くて、単純にお客さまも、秀吉と信長がしゃべる場面は楽しみだろうなと思ったので。2人の面白い掛け合いが見たいです、とお伝えした覚えがあります。
――2人の関係性や個性がよく分かるシーンでした。
内藤 秀吉と信長がなんと呼び合うかについては、本読みの場で皆さんにいろいろとアイデアを出していただいて。「姉御」と「猿子」になったんです。
――そういったキャラ同士の関係性は、原作ではあまり強調されていない部分ですよね。
内藤 はい。逆に、アニメでできた設定を逆輸入して。例えば、ゲームの中で秀吉が信長を「姉御」と呼んだりもしています。
――ところで、ゲームの中で信長が一番人気なのは、アニメの放送開始後も変わってないのですか?
内藤 はい。2012年の年末にやった人気投票でも、ダントツの1位でした。ちょっと、安心しましたね(笑)。
――アニメで信長を演じた大久保瑠美さんも、安心したでしょうね(笑)。1月23日(水)には、DVDBlu-rayの最終巻も発売されて、アニメ「戦コレ」はひと区切りついてしまうのかなという残念な気持ちもあるのですが。今後の「戦コレ」については、どのような展望を?
内藤 今回のアニメ化で、後藤監督を始め、アニメーターの方々、脚本家の方々、声優さん、音楽を作ってくださった方、他にも携わった多くの方々のご協力をいただいて、「戦国コレクション」というコンテンツがかなり成長できたと思うんですね。そういった「戦コレ」のいじり方というか……育て方、遊び方を分かってくださっている方が、せっかくいらっしゃるので。皆さんには引き続きお力をお借りして。いろんな方面に展開していきたいですね。
――楽しみにしています。最後に、読者へのメッセージをいただけますか?
内藤 「戦コレ」は、お客様にとっても自由度の高いコンテンツなのかなと思っています。原作の中には、アニメに出てないキャラクターもまだまだいますし。皆さまで色々な楽しみ方を見つけていただきながら、引き続き「戦コレ」を楽しんでいただければ嬉しいです。
――ありがとうございました。アニメ2期の実現も期待しています。
内藤 はい。ぜひ前向きに……(笑)。
――ぜひぜひ、本当に期待してます!
(丸本大輔)