すぐに捨ててしまうもの。その一つが、アマゾンで買った商品を梱包してある箱。
アマゾンの箱には様々な大きさがあるが、全種類を目指して集めている男がいる。名前は斎藤公輔さん。一体何の為に集めているのか?この疑問を解決すべく、大阪の斎藤さんの元へと向かった。すると、地味な苦労話が次々と…。

――現在、何種類の大きさの箱を集めていますか?

「44種類です」

――アマゾンの箱って、そんなに、バリエーションがあるんですか!そもそも、アマゾンの箱を全種類集めようと思ったきっかけは?

「日頃から、アマゾンで本をたくさん買ってたんですけど、普通だったらダンボールは捨てるものだけど、僕は『何かに使えるんじゃないか』と思ってとっておいたんです。おかげで、アマゾンの箱はたまる一方でした」

…ところが…

「今から5年前(2008年)のこと。
ある日、箱を見ていたら型番が書いてあって、どうやら連番になっていることに気づいたんです。110と130があるから、120もあるはずだって思いまして。すると、急に他の箱の型番も気になり始めて調べてみたら、色々な型番があることが分かったので、それを全種類集めようと思ったんです」

決意はしたものの、これが意外と一筋縄ではいかないことが分かったという。例えば、110と130という型番の箱が手元にあって、120のものが欲しいと思った時は、その中間の大きさのものを注文すればいいかというと、必ずしもそうではないとのこと。

――「この大きさのものを注文すれば、この型番の箱で届けられる…」という感じの予想はするんですか?

「予想はするんですけど、実はこれが非常に難しいんです。例えば、ほぼ同じ大きさの文庫本を買ったとしても、いつも文庫本を買う時とは違う大きさ(型番)の箱で届くことがあるんです。
そういった“フェイント”があったりするので、予想は難しい。大きな箱の型番が狙えると思って大きい商品を買っても、大きすぎて、もはやアマゾンの箱に入ってなかった、なんてこともよくあります」

――「ただ集めているだけ」という感じではなくて、ミョーな緊張感が漂っている趣味ですね…

「商品が届くまでは、どんな型番の箱で届くのか分からないので、『積極的な趣味』というよりも、完全に受け身ですね。自分でも、何をやってるんだか、わからなくなることがあります(笑)」


●悲劇!斎藤さんが知ってしまった「衝撃の事実」

紆余曲折しながらも、型番が順調に揃うようになり、20種類を超えた2011年。斎藤さんは衝撃の事実を知ってしまう。その事実とは…

【アマゾンの箱のリニューアル】

「これにはビックリしました。それまではBX01といったような型番だったんですけど、2011年の夏頃から新しくなって、XM、XLといった型番が続々と登場したんです」(斎藤さん)

――サイズが変わったんですか?

「サイズは変わらないんですけど、箱の開けやすさなんかが改良されたみたいなんです。
僕はアマゾンの人間ではないので、よく分からないんですけど」

――(涙)なんだか、仕方がないこととはいえ、斎藤さんの苦労をあざ笑うかのような事実ですね…。

「でも、おかげでまた新たな型番の箱を集める楽しみができましたね」

なんて前向きなんだ!いや、前向きすぎるよ~。


●念願だった「細長い箱」を入手!

色々な大きさの箱を黙々と集めていくうちに「どうやら細長い箱があるらしい」ということを知った斎藤さん。「この時は、どんな細長いものを買おうかと、かなり迷ったんですけど、結局、壁などにコードをつける時にコードを目立たなくさせる、プラスティックのカバーを買いました。あれっだったら、細長いので」
この作戦は見事に的中!細長いコードカバーが、細長いアマゾンの箱に入れられて届けられたという。斎藤さんは欲しかった「細長い箱」を入手したのだ!

――もはや、中身のコードカバーは、どうでもよくなってますね(笑)

「いや、ちゃんと使ってますよ(笑)。
自分で壁につけて。ちょうど欲しかったし」

――ちなみに、コードカバーはどんな状態で入ってたんですか?

「細長い箱の真ん中に、細長いコードカバーが1本だけ入ってまして、そのまわりに隙間を埋めるための、グチャグチャになった紙がたくさん入れてありました。入れてくださった方も、なんで1本だけ注文したんだと思われたでしょうけど(苦笑)」

ところで、ここまで熱心に読んでくださった読者の頭の中には、ある不安が生じているのではなかろうか?それは(斎藤さんは、買わなくてもいいような物も、無理に買っているのではないか?)という不安。もしそうだとしたら、いくらお金があっても足りない。高い物を買って、既に持っている型番の箱で届いてしまったら、そのお金は水の泡と消えてしまうのではないか…!その状態が続いてしまったら、斎藤さんはこの先、貧乏まっしぐらである。

「高くて欲しくない物を無理に買うということはないですね(笑)。
基本的に欲しいものしか買いません。金銭的に無理をしないで集めるというのがモットーなので」(斎藤さん)

それなら安心。実際に細長いコードカバー(※150円)も使ってるということだし。


●恐怖!部屋がアマゾンの箱に占領されていく…

――集まった箱(44種類)はどのようにして保管してるんですか?

「最初は押入れに入れてたんですが、入りきれなくなったのでソファーの裏に置いたり、中に荷物を入れてタワーみたいに積んだり、上にパソコンを置いたりして家具がわりしたこともありました。おかげで引越しの時は、ダンボールに困らなかったですね。でも…」

――「でも…?」

「こんなことを言うと元も子もありませんが、ハッキリいって、邪魔です」

――「邪魔」って言っちゃいましたね(笑)

「でも、5年も集め続けてると、捨てたくても捨てられないんですよ~」

…もう、斎藤さんには、このまま突っ走って欲しい気がする。



●さらなる「果てしない挑戦」にするためのお願い

――ところで、肝心なことを聞くのを忘れていましたが、そもそも、アマゾンの箱の型番って何種類あるのですか?

「それが分からないんです」

――え~~~!?ゴールが見えませんね…

「型番の数字から、持ってない種類を予想はできるんですが、全く別の型番があるかもしれないので、分かりません」

そうなると、「アマゾンの箱の関係者のみなさん、および、エキサイトBitコネタの記事を読んでいらっしゃるみなさん、分かる方は教えてくださ~い」と、言いたくなるところだが…

「アマゾンの箱の関係者に聞けば教えてくれるとは思いますが、かといって答えを聞いてしまうのはイヤなんです」(斎藤さん)

なんて、ストイックなんだ(涙)。みなさんも、斎藤さんの夢を壊さないためにも、箱が何種類あるかという情報は、絶対に教えないでください。


●斎藤さんはこんな人

さて、通常であればこの時点で記事は終了なのだが、ここで終わってしまうとエキサイトBitの読者のみなさんに「斎藤さんって、一体、何をしてる人なの?」という、大いなる疑問を残したまま逃げることになるので、最後に簡単に紹介を。

斎藤さんは、大阪にある某有名電機メーカーで、映像系の技術開発の仕事に携わっている理系の会社員である。
「箱とは全く関係のない仕事をしている、普通の会社員です」
とのこと。

アマゾンの箱の型番をコンプリートするという斎藤さんの夢は、デジタルテレビの大画面のように、鮮明に頭の中に描かれているのである。(取材・文/やきそばかおる)