先日、ある小説の中を読んでいたら、「京橋のすし屋で寿司を食べた」という表現が出てきた。

「京橋」という地名は、東京(中央区内)と、大阪(大阪市内)にあるのだが、筆者は大阪の京橋しか知らなかったので、てっきり小説の舞台は大阪にあると思ったのだが、読み進めていると、どうにもつじつまが合わず、大変混乱した。


このように、複数の場所で使われている地名いうのは、結構多いのだが、最もたくさん存在する地名は、どんなものなのだろうか? 今回は、地名の中でも特に使用頻度の高い、いわば地名界の「鈴木さん」「佐藤さん」的な存在について、調べてみた。

なお、調査にあたっては、大字、小字を含めると地名が非常に多く、細かすぎて伝わらない可能性があるため(実際は調べるのがものすごく大変だったため)、今回は、市町村及び特別区に範囲を限定して調べた結果を紹介する。調査は、日本を代表する地名関係サイトの一つ、「都道府県市区町村」のデータベースをお借りして行った。データは2013年1月現在のものである。

まず、「最も使われている地名」の栄えある第一位は、「池田」の5カ所。大阪府には「池田市」があるほか、北海道、福井県、長野県、岐阜県に「池田町」という地名がある。


大阪府池田市のホームページによると、「池田」の地名の由来は、「伊居太(いけだ)神社の社名から」「中世の豪族『池田氏』の名前から」のどちらかの説が有力であるようだ。筆者個人としては、「池と田んぼがある場所にはどこにでもつけられる」という汎用性の高さがポイントになっているものだと思っていたが、そういう簡単な話でもないようだ。

ちなみに、長野県にある「池田町」は、いけだちょう、ではなく、いけだまち、というらしく、「僕の出身はいけだまちです」という人がいたら、その人は長野県出身である可能性が高いということを、ぜひ覚えておいていただきたい。

池田の次に多いのが、「朝日」。山形県、富山県、三重県に「朝日町」があるほか、長野県には「朝日村」があり、全部で4カ所ある。「朝日が一番に見える高台」であることからこの地名になったケースが多いようだが、 山形県朝日町のキャッチフレーズは「りんごとワインの里 朝日町」であり、また富山県朝日町は「うみ彦・やま彦・夢産地」だったりなど、「朝日」以外の点が積極的にアピールされており、当の朝日としてはやや寂しい思いをしているのではないかという気もする。


3位は12の地名があり、「南部、川崎、美里、川西、三島、美郷、昭和、高山、府中、日野、美浜、大和」。個人的に、「大和」という地名はもっとたくさんあるような印象を持ったが、市町村の範囲では意外と少ない。実は「大和」は、2003年の時点では12カ所に存在する、まさに地名界の「鈴木さん」的な存在だったのだが、平成の大合併により激減した。まさに悲しい過去を背負った地名なのである。

小説で「池田町」を見つけたら、北海道、福井県、長野県、岐阜県、大阪府のどれが小説の舞台なのか、要チェックや!

(エクソシスト太郎)

参考サイト
都道府県市区町村
http://uub.jp/