■『即興小説! 15分で、書く。』(八月科)、『15分×30本 即興小説集』(方程式が解けない)
文学フリマでは毎回、どうしても評論系のサークルをメインに回ってしまう自分。それは創作系、とくに小説は、立ち読みだけでは正直買おうかどうか躊躇してしまうところがあるからなのだが、そこへ来て今回、小説サークルにある傾向というか、新たなムーブメントが起きつつあることに気づいた。それは「即興小説」だ。私が見つけたかぎりでは、2つのサークルがそれぞれ『即興小説!』と『15分×30本 即興小説集』という本を販売していた。
そのそもそもの発信源は「即興小説トレーニング」というサイトらしい。参加者はそこで出されるお題に沿って、制限時間内(自分で選ぶことができる)に即興で小説を書くというルールだ。上記2冊も、同サイトに参加した個人が、自分で書いた小説をまとめたものであった。
小説というのは、作品それ自体で完結してしまいがちで、外に向ってストレートに訴えかけることがなかなか難しい表現ジャンルだと思う。それも一発芸的な即興小説なら、作品として未完成なところがある分、読者が「自分ならこう書くかも」などとツッコミを入れたり、働きかける余地が生まれる。さらにネットを飛び出し、文学フリマという場と結びつくことで、新たな化学反応も期待できそうだ。