【前科持ちはやっぱり怪しい?〜的割り捜査〜】
たとえば同一手口の空き巣事件が特定地域で多発しているとする。手口分析の結果、マエモン(前科者)の中からお勤め中のホシを除外して10名程度に絞り捜査を開始する。これを的割り捜査という。捜査の順番は、ギャンブル場などの立ち回り先の捜査、的の顔を拝む(確認するという意味)、尾行、ヤサの確認、行動確認、犯行を確認、オフダ(逮捕状)の請求、逮捕、取り調べ、と進む。
一度でも過去にホシを担当したことのあるドロ刑であれば、ホシがどのような場所をヤサに選ぶのか、ギャンブルなら何が好きで、競馬が好きならどこの競馬場へ行くのか憶えているのだという。
【人情刑事、落としの手法〜引当り捜査〜】
逮捕してからがドロ刑の腕の見せ所である。ドロ刑はさまざまなテクニックを駆使してホシを落としにかかる。また逮捕状に書かれている本件は「落ちて当たり前」。ここから余罪をいくつ吐き出させるかが勝負になる。そこで使われるのが引当り捜査。警察の捜査用車両に被疑者を同乗させ、1件1件犯行現場を確認するのだ。
具体例をあげよう。ある窃盗犯を逮捕した。しかし、ホシは本件容疑は認めたものの、余罪の追及に関しては否認した。
若手だった著者は上司の部長刑事と共に、ホシを連れて引当り捜査に出た。しかし部長は犯行現場には向かわず、神奈川県内のとある霊園で止めるように言った。部長はホシを車から降ろし、着ていた上着を手錠の上にかけた。