犬夜叉。うしおととら。
GS美神、究極超人あ〜る。
小学館のマンガからはたくさんの人気キャラクターが登場しました
そのヒーロー達が、世代を超えて大集合しました。

『3・11を忘れないために ヒーローズ・カムバック』と題したこの本は、小学館ヒーロー復活!と言わんばかりの、懐かしのヒーローだらけで、鼻血が出ます。テンション上がります。
すべて描きおろし。はるか昔に終わった作品が、このために復活している。


細野不二彦『ギャラリーフェイク』
ゆうきまさみ『究極超人あ〜る』
吉田戦車『伝染るんです』
島本和彦・石森プロ『サイボーグ009』
藤田和日郎『うしおととら』
高橋留美子『犬夜叉』
荒川弘『銀の匙 Silver Spoon』
椎名高志『GS美神 極楽大作戦』
かつでサンデーっ子だった大人なら垂涎すぎるラインナップ。『絶対可憐チルドレン』じゃなくて『GS美神』とか! ボディコン懐かしい!
そもそも『あ〜る』とか『伝染るんです』とか、ヒーローなのそれ!?
でも嬉しい、会いたかった! 本当に心から会いたかった!

ビッグコミックスピリッツ、ゲッサン、サンデーとあらゆる雑誌で一斉に、過去の人気作が蘇り、掲載時にはそれらの雑誌が売り切れるほど話題になりました。
発足は『ギャラリーフェイク』の細野不二彦。本の売上と印税は被災地への寄付になります。

まあこう書くと硬い感じがしますが、違うんですよ。

がっちりと東日本大震災を描いた作品は、細野不二彦の『ギャラリーフェイク』の新作と、別口で書いていたかわぐちかいじの自衛隊マンガのみ。
あとはヒーローが復活したということのみで、震災関係ないんです。

そうだよ、震災震災って言われると未だに心臓ぎょっとするんだよ。
癒されたいし、助けられたいのはどこにいてもおんなじなんです。
だからマンガのヒーローが「ここ」にいるだけで、それだけで嬉しいんですよ。
そのほうがいいんですよ。


彼らは震災に関するなにかをするわけではありません。
どの作品も、その作品内での「ヒーロー」を貫くだけです。
これがものっすごく心に刺さる。だって作り物じゃないもん。
作り物世界でのリアルを、彼らは真剣に戦っているんだもの。

特に『うしおととら』はぼくにとって青春のヒーローだったので、見た瞬間からもう意味もなくボロボロ泣いたものです。

若いころ、辛いことや苦しいことがあったときに、うしおととらの二人がどれだけ心の支えだったか。
彼らが「大丈夫だ!」「辛かったろうなあ」とマンガの中で言ってくれるだけで、どれだけ生きる勇気がでたことか。
また今、大人になってから勇気づけられるなんてなあ。

この本は間違いなく、震災復興のための本です。
しかし同時に、今の若者から老人まで、疲れた人達への強力なエールでもあります。
あ〜るが走り回り、銀の匙で屯田兵が強く生き、美神さんがツンデレるのは、気づかないうちに心の被災者になっていた人達に元気を与えてくれるはずです。

構成もうまいもので、最初と最後に細野不二彦とかわぐちかいじの震災物語が置かれることで、その他の元気いっぱいの作品のヒーロー達の意思をより一層感じられるようになっています。

難しいことは忘れよう。
好きだったキャラが蘇って集まっており、あの時と変わらない日々を過ごしている。
それだけで、心の底から元気が出る。これがヒーローだ。


『3・11を忘れないために ヒーローズ・カムバック』

(たまごまご)