例えばプリキュアになりたいとします。
現実にはなれません。
残念。なので方法は2つ。
一つはコスプレ。
もう一つは着ぐるみです。
プリキュアショーなどであるやつです。全身肌色タイツで覆って、頭に大きな笑顔のかぶりものをする。

写真だけみると、顔がでかいので「うわっ」となるんですが、実際動くと意外にかわいい。

昔からあってメジャーなのに、謎多き「着ぐるみ」文化。
主にショーで用いられるものですが、だいぶ前から趣味で個人的に楽しむ人が増えました。
動物型じゃなくて人間型なんです。コスプレじゃないのはなぜ?

藤堂あきと『カブルモン』は、スーツアクターから趣味の着ぐるみまで、あくまでもきぐるみにこだわって描かれた4コマ漫画。
着ぐるみについての説明が、とにかく細かい。

着ぐるみの魅力、なぜ着ぐるみなのか、どうやって着たり楽しんだりするのか。
そもそも着ぐるみなんて、かぶる仕事やってない人には全然わからないもの。でも、このマンガを読めば少女たちの青春部活動を楽しみながら、着ぐるみのノウハウがわかる、着ぐるみ入門書です。

コスプレ自体、趣味として定着したのは「違う自分を見せる」という側面もあります。
それをいろいろな意味で超越するのです、着ぐるみは。
そもそも、一体誰なのかわからない。
完全にキャラになりきります。
「自分」は介在しなくなります。「自分」を隠し、キャラを演じる。外から見た人には完全に「キャラ」。
動物にも怪獣にも男にも女にも、区別がない。
全く別のものになるために、肌色のタイツが必要になるのです。


しゃべるのが極端に苦手な、内気少女、高沢和葉。
彼女は昔からアニメ「魔法宇宙少女エヴェレッタ」が大好きでした。
高校に入ってから、そのエヴェレッタのかぶりものを見つけたのが人生の岐路。
先輩たちに巻き込まれ、「カブルモン部」に入ることになります。

着ぐるみを着ていれば、中に自分がいるのを誰もわかりません。
なりきれるんです、完全に。
心も着替える、とこのマンガでは述べています。
もちろん簡単ではないです。
肌色タイツで全身を覆うからすごく暑いし息苦しい。ヘッドは意外と重い。視界は狭い。トイレにいくのも一苦労。

でも完全になりきれるって、ちょっと……うらやましい。

性別を越えられるってのはうらやましいところ。
ぼくも痩せさえすれば、着ぐるみでプリキュアになれるのか。それはなりたいなあ……。キュアマリンになりたい(真顔)
仮面の自作方法、動きが制限されるためサポート係との連携が必要なことなど、着ぐるみのノウハウを見ていると、ちょっとやってみたくなるんだこれが。
いやほんと。だってなりきってる彼女たち楽しそうなんだもん。
青春の若い少女の身体をあえて隠すだけの理由があるのだ。

他にも、着ぐるみの中の人のことを「内臓」と呼ぶとか、着ぐるみなのに盗撮される(?)とか、着ぐるみあるあるも満載。
これ読んでからキグルミショーに行くと、ちょっと見え方変わってくるかもしれません。

ん? 気持ち悪い? 
確かに。そう見えても仕方ない。人ではないものですから。
それに対してこんなセリフがあります。
「不気味とか、なにアレ?って思うのも、ひとつの「興味」よ」
なるほど。なかなか、興味をそそる本ですコレ。
ここをスタートに、着ぐるみデビューする人が増えたら楽しいですね。
うーん、プリキュアになりたい。バッファローベルでもいいです。
……ダイエットするか。

藤堂あきと『カブルモン』
(たまごまご)