ここ数年、ランニングが人気だ。すでにランニング人口は1,000万人を超えたといわれ、もはやブームというより、1つのライフスタイルとして定着した感が強い。


走る理由は人それぞれだと思うが、健康維持を目的にしている人も少なくないはず。だが実際に、ランニングを始めて健康になった! と実感している人はどの程度いるのだろうか。

「一般のランナーの方が、みなさん健康的なランニングをしているか、というとクエスチョンマークがつきます」

そう疑問を投げかけるのは、ロンドン五輪マラソン男子代表の藤原新選手もサポートするランニングトレーナーの白方健一さん。先ごろ開催された『運動直後のケアを極める リカバリーセミナー』で、怪我や不調を訴える人が多い昨今のランニング事情を教えてくれた。

「ランニングの後、膝や腰が痛いという人はかなりいます。動作が悪いということもありますが、慢性疲労による怪我が多いですね」
慢性疲労が起きる原因は、ランニング直後のケア不足による影響が大きいと言う。


実は、運動をすることは体にストレスを与える行為でもある。とくにランニングは体重の3~6倍の荷重が片足にかかり続けるため、体への負担も小さくない。ランニングというと軽い運動と思いがちだが、運動後は疲労物質がたまり、血流が悪くなっているため、血流を整えるケアが重要だという。

自律神経のスペシャリストとして知られる順天堂大学医学部の小林弘幸教授も、
「運動後は興奮や緊張時に働く交感神経が優位になり、交感神経が過剰だと、血流が悪くなり、免疫力も低下します」
と指摘。さらに血流を悪いままにしておくと、老化や肌荒れ、心の乱れなども引き起こす障害に陥りかねないというから、放ってはおけない。

さらに小林教授は「健康とは、いかに質の良い血液を十分に1つ1つの細胞にまで流せるか、ということ。
血流をよくしていれば、病気になりにくいともいえます」
と血流の重要性を強調する。だが現状は、走ったことに満足してしまい、運動後のケアについては受動的なランナーが多い。

ランニング後のケア方法を白方さんに聞いた。
「ランニング自体が道具をほぼ必要としない運動なので、直後のケアも最低限の場所や道具で気軽にできるものがよいでしょう」

具体的には、香りで直接脳に刺激を送るスポーツアロマや、筋肉にどれくらいダメージがあるか確認して硬くなっている筋肉を元通りにしていくアクティブストレッチなど。また最近では、運動後に着替えるだけで積極的な疲労回復効果を促してくれるリカバリーウェアなるものも登場している。

「アクティブストレッチなどで体をほぐす際に、リカバリーウェアを使用すると、より効率的に身体がケアできるし、ケアも習慣化しやすくなります」
白方さん自身も愛用している株式会社ベネクスの「リカバリーウェア」は、特殊繊維が自律神経(副交感神経)に作用し、筋肉の弛緩や血管の拡張を促し、ただ着るだけで疲労回復をさせてくれるのが特徴。


「疲れているからケアはやらないのではなく、疲れているからこそやる、と意識を変えてほしいですね」
と白方さん。最初は短時間でもよいので、ランニングとその後のケアを意識的にセットでおこなってほしいとのこと。

健康のために始めたランニングによって、逆に不健康になってしまったのでは悲しすぎる。まずは自分でできる簡単なケアから取り入れてみては。