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芥川賞受賞作『爪と目』は正統派のホラー小説である

       
〈父〉の妻(〈わたし〉の母)がマンションのヴェランダで死んだ。〈あなた〉(麻衣)は〈父〉とその幼い娘である〈わたし〉陽菜(ひな)と同居することになる。
〈あなたと父は、よく似ていた〉とあるように、ここに出てくる〈あなた〉、その愛人である〈父〉、一見タイプは違うけれど妙な共通点がある。世界にたいする無関心と、自分がつくりあげる半径10メートル程度の世界への埋没である。
そういうふたりが同棲していたらどうなるか。おたがい同居している相手にすら無関心なカップルができる。そもそも〈父〉は存命中の妻にも無関心だったのだ。ただ、ここは男女差なのか、作品を読んでいくと〈父〉はおめでたく鈍感に見え、〈あなた〉は壊れた人に見える。

この不穏な家庭がどうなっていくのかが作品のミソで、その意味では正統派のホラー小説である。ホラーらしいカタルシスもある。いっぽう作中には、〈わたし〉が知り得ないはずの〈あなた〉の内面やその実家の母の内面も記され、このあたりは非リアリズム的な現代小説ともいえる。題名の『爪と目』が、だれの爪とだれの目のことかはここでは書きません。
この作品集には他に「しょう子さんが忘れていること」「ちびっこ広場」という短めの短篇も収録されている。

藤野可織は以前にも一度芥川賞候補になったことがある。そのときの候補作は美術館を舞台とした「いけにえ」(『パトロネ』所収、集英社)だ。こちらはマジックリアリズムというか、シュールな不条理ホラーというか。芥川賞とホラーって相性がいいのかもしれない(小川洋子の受賞作

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