ゴリラが子猫を可愛がったり、ライオンとクマが仲良くなったり、サルとハトが仲良くなったり…「なんで仲良くなっちゃったの?」というエピソードが存在する。そんな、ありえないどうぶつ同士の友情エピソード47編を紹介した本『びっくりどうぶつフレンドシップ』(飛鳥新社)が発売された。
早速、翻訳を担当されたムツゴロウこと畑正憲さんに、全く違う種類の動物同士の友情エピソードや、ムツゴロウさんと動物とのエピソードをお聞きした。

●ゴリラも子猫を可愛がる

※ムツゴロウさんのお話の前に、こちらのお話を。
1984年、アメリカで手話を教え込まれたゴリラ(ココ)が、子猫を可愛がった例がある。ココはゴリラ基金の先生から与えられた子猫を、人形を抱くようにやさしく扱い、乳を飲ませようとしたり、つっついたりして仲良く遊んでいた。子猫がココを噛んだとしても、決して攻撃しようとしなかった。ところが、ある日のこと、子猫は車にひかれてしまう。
この悲しみをココは調教師に向かって手話で“ナク、カナシイ、イヤダ”と表現したというのだ。

――ゴリラも子猫を可愛がることがあるんですね!
「愛の信号が合ったんだと思います。100%とはいわないまでも、共通する部分があったんでしょう。ゴリラが“愛してるよ”と言えば、子猫も“愛してるよ”と返す。体の大きさの違いは関係ありません」
――では、人間もゴリラと仲良く接することはできますか?
「普通はできないと思いますが、僕だったらできると思います」
――種類の違う動物が仲良くなる例は他にもあるんですか?
「クロクマが猫と仲良くなったり、ゾウと犬が仲良くなったり、サルとハトが仲良くなった例などたくさんあります。動物の種類は違うのに言語が成り立つところが、実に面白いですね」
――ゾウと犬も、大きさに相当な違いがありますね!
「シンディーという1匹の犬がゾウに出会ったんです。
すぐに仲良くなりまして、いつもピターッと一緒にいたんです。川へ水浴びに行く時も一緒に行くほど仲が良いんですけど、ある日、大雨が降って増水していた川にシンディーが流されちゃったんです。すると、ゾウが川へ入っていって、シンディーを助けたという話が残っています」

●ムツゴロウさん、ゾウにヤキモチを妬かれる

ムツゴロウさんは、どんな動物とも仲良くなる達人だ。ある日、スリランカにある、事故等に遭ってしまったゾウのケアをしている場所を訪れた時のこと。

「ゾウたちが私のことを聞いてくれるかどうか不安だったけど、彼らは私のことを受け入れてくれました。しかも、僕がある一頭のゾウと仲良くなると、他のゾウがヤキモチを妬くんです。
すると、ヤキモチを妬いたゾウが僕のそばに来て、僕を蹴飛ばすんです。すると『あ、僕は仲間になったんだ』っていうことが分かるんです」
――ゾウに受け入れられるなんて!普通の人間だったら恐れちゃいますよ。
「ゾウ使いですら、絶対にゾウの前に座っちゃいけないんです。殺されちゃうから。でも、僕はゾウの前でも平気で座ったり、寝転んだりします」
――危険じゃないですか?
「僕は生きてるし、大丈夫ですよ」

●ムツゴロウさん、ジャガーにも受け入れられる

「チーターがたくさん集められている保護区に入ったこともあります。僕にはチーターとコミュケーションをとるための術はないけど、チーターの方から甘えてきたり、”アイラブユー”って言ってきたりします」
――チーターが寄ってきた時は、どんな対処を?
「受け入れるだけです」
――危険ではありませんか?
「僕は生きてるし、大丈夫ですよ」
――普通の人間だったら、逃げてしまいそうですが…。

「僕は、自分を守ることは一切してきませんでした。ペルーにジャガーをケージに入れて飼っている人がいて、その人から『中に入っていいよ』って言われたから入ったんです。その時、ジャガーはちょうど発情期でした。発情期の動物は非常に敏感だけど、僕はその敏感さを愛しているし、発情期こそコミュニケーションがとれる時期だと思っています」
――ケージに入った後は、どうなりました?
「まずは僕がケージの端の方に座りました。すると、ジャガーがゆっくりと寄ってきて、僕を仲間だと思ったみたいで、舐め始めました。ジャガーの舌って、トゲトゲしていて痛いんですよ(苦笑)。
僕は『お前、いいね!』って言いながら急所を触ってやりました。僕とジャガーは、すっかり仲良くなりましたね」

ちなみに、ムツゴロウさんは、ケージに入った時にジャガーに向かって「友達になろう」という愛の基本言語を送ったそうだ。すると、ジャガーの方から「いいよ」と返されたとのこと。

●ムツゴロウさん、ワニだらけの川へ

ワニに関するエピソードもある。
「パンタナールでのこと。乾季になると水が少なくなるから、水がたまっているところに30~40頭のワニがいることがあるんです。
そこへ、バクが泳いできたのですが、ワニは襲いません。僕が現地の人に『あの中に入っていける?』と聞いたら『とんでもない。食われてしまう』と即答しまして。それを聞いた僕はなんだかムカムカしてきて、中に入っていったんです」
――おおーーーー!!
「早速、ワニが寄ってきました。『ここにいるワニには、優しい気持ちはないんだろうか』と思っていると、ワニは僕を許してくれて僕を泳がせてくれました。水中にワニがいるのは分かっていたから、水に入った時にワニの目玉がどんどん寄ってきた時は、さすがに驚きましたけど」

――ムツゴロウさんは、相手の動物に敵意があるか否かをどこで判断するんですか?表情とか息遣いですか?
「第六感です。相手の表情で判断することはありません。動物は表情筋が発達していないので、表情筋によってコミュニケーションをとるほど知力が優れていません。人間の表情筋は、それほど特別ということなんです。怒っているとか、嫌がっているというのは、人間が人間を見て分かること。だから、私たちが動物の次元に踏み込まないとダメなんです」

ただ、初めてライオンに近づいた時は、ライオンに抱きつかれて肩を噛みつかれたそうだ。
それでもムツゴロウさんは言う。
「噛みつくこともコミュニケーションですから。ライオンが僕を殺さない程度に噛んでるなっていうのは分かりますよ」

ムツゴロウさんのお話を聞いて分かったのは、例え大きさも種類も違う相手でも、好意をもって接すると、向こうも受け入れてくれることがあるということ。苦手な相手(人間)にも、優しく接してみると、意外と仲良くなれるかもしれない。(取材・文/やきそばかおる)


●『びっくりどうぶつフレンドシップ』(飛鳥新社)発売中。
http://www.asukashinsha.co.jp/book/b122063.htmlクマとライオン、イルカと犬など、ありえないどうぶつ同士の友情エピソード47編を紹介した本。
著 ジェニファー・S・ホランド/訳 畑正憲